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第28話

この言葉は今井マネージャーがまるで功績は自分のものではないと慌てて説明した言い訳のようなものだったが、実際誰もがその意味を理解していた。つまり風間社長が広瀬雫のデザインが素晴らしいと言っているのだ。

それを聞き、浅野舞の笑顔がこわばった。ちょうどその時、今井マネージャーは助手が持ってきたカップを自ら広瀬雫に手渡した。「広瀬さん、レモンジュースです」

広瀬雫に出したレモンジュース以外、他の三人とも同じコーヒーだった。

広瀬雫は少し意外だったが、深く考えず一口飲んだ。

春日部咲は顔色を変え、後ろから陰気な声で「今回は言い訳できないでしょ!」と言った。

自分のコーヒーを見つめている浅野舞は、何も言わなかった。

......

間もなく、風間湊斗が会議室から出てきた。

スラリとした長身に、無表情だがこれ以上ない整った顔をして、後ろに何十人かのスーツ姿の男を連れて出てきた。雰囲気から見るとそんなに堅苦しくないが、緩やかでもなく、全員小声で何かを話し合っていた。

風間湊斗がこの後また用事があると分かって、彼らはエレベーターに向かった。

風間湊斗は広瀬雫たちを一瞥し、目の色も変えず、横山太一に頷いて、別の会議室へ入って行った。

彼はすでにスーツの上着を脱いでいた。ネクタイがきついと思ったのか、少し緩めていた。白いシャツがその完璧なボディーラインをくっきりとさせていた。醸し出すオーラ―はそれほど強くないが、とても近づけない雰囲気に包まれている。

広瀬雫が立ち上がろうとすると、懐に抱えていた書類を突然春日部咲に奪われた。「これまでの報告はあなたがやったんだから、今回は私がするよ」と彼女はあごを上げて言い出した。

そう言い終わると、返事も待たず、書類を抱えて風間湊斗の後ろに続いて会議室に向かった。

広瀬雫は一瞬複雑な目つきになった。

......

今回の会議の話題は、足立グループの盗作の話に違いない。その処罰について風間グループはしっかりと決めていた。そのため、有賀グループと浅野グループのデザインを再検定しなければならない。

浅野グループのデザイナーが立ち上がるのを待たず、春日部咲が先に前へ出た。

スーツのタイトスカートが彼女の完璧なスタイルをくっきりと見せていた。彼女の目にはいつものように色っぽい笑みが浮かんでいた。

「風間社長、私は有賀グループB
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