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第23話

別荘のドアを開けると、音に気付いた大宮さんが迎えに来た。

「若奥様、ようやく帰られましたね。昨日奥様は電話をおかけになりましたが、電源が切れていると言っていました。若旦那様も一晩中ずっと探していらっしゃいましたので、ただ今帰ったところです。今は書斎にいらっしゃいます。みんなは若奥様を心配して、奥様なんて午前三時まで寝つけられないご様子でしたよ」

広瀬雫は申し訳なさそうに「昨日の夜、私は......友達のところに泊まったんです。携帯の電池が切れていて、連絡が取れなくて」と説明した。

風間湊斗のところで一晩過ごしたのは、もちろん口が裂けても言えない。

大宮さんは頷き、薄いブランケットを渡し、広瀬雫に何かを暗示するようにわざと瞬いた。「さっき若旦那様が書斎で眠っているのを見ました。風邪を引かないように、ブランケットを掛けようと思いましたが、ちょうど若奥様が帰ってきたから、ブランケットをかけてあげてくれませんか」

広瀬雫はブランケットを抱えたまま、しばらくその場で固まっていた。

大宮さんが好意でそうしていることは知っている。この家で、大宮さんと有賀恭子はよくさりげなく彼女と有賀悠真を仲良くさせるためにいろいろやってくれたが、残念なことに、この二年くらい、広瀬雫はずっとその期待に応えられなかった。

大宮さんは彼女に勇気を与えるように笑ってから、台所に入った。

持っているブランケットを見て、広瀬雫は苦笑いしていた。もしただ薄いブランケット一枚で、あの男の心を自分のものにすることができるなら、彼女はこの二年間、こんなに苦しむ必要はなかっただろう。

さっき大宮さんの話によると、有賀悠真は自分を一晩中ずっと探してくれたという。広瀬雫の心はぬくもりと僅かな痛みが同時に占め、思い切って心を鬼にしてしまうことができなかった。

ブランケットを胸にきつく抱きしめて、一歩、また一歩、上の書斎に向かった。

書斎のドアは鍵が掛かっておらず、軽く押すと開いた。

中に入って見回すと、来客用のソファーに横になった人がいた。

有賀悠真は疲れて寝ていたのだろう。面倒くさいと思ったのか、上着のスーツを左手で握ったままソファの上に置き、ワイシャツのボタン―を何個開けて、そのまま寝てしまったようだ。右手を目の上に当てていて、その目の奥にある鋭さも隠していた。

彼が眠っている時だけ、こうや
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