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第20話

「あ、それは私がやりました」酒井さんはとても親切そうに微笑んだ。「汗をとてもかいていらしたから、着替えないといけませんでしたからね。お腹がすいたでしょう。起きて朝食を召し上がってください。そうだ、洗面所に歯ブラシなど必要なものは揃えておきました。ピンク色のを使ってくださいね」

広瀬雫はどうも奇妙な感覚だった。朝、知り合いとはいえ、そんなに親しくない男性の部屋で目を覚ましたのだから、どう考えても、おかしいだろう。でも、昨晩は熱を出してやっぱり記憶がなかった。彼女は少しためらって尋ねた。「風間社長は......今どちらにいらっしゃいますか?」

「ジョギングに行かれましたよ。もう少ししたら戻って来られます」

広瀬雫はそれを聞いてビクッとし、すぐに起き上がった。後で風間湊斗にどんな顔で会えば良いのか分からないので、彼が戻るまでにこの場を去ってしまいたかったのだ。

彼女は頭も昨日のように目眩もせず、体調がかなり良くなったのを感じた。

自分の服に着替え、洗面所に入ったところでまた呆気にとられた。

洗面台の上には2つの歯ブラシセットが置かれていて、紺色とピンクが並んでいた。セットが2つあるのは別におかしいことではない。さっき酒井おばさんも言っていたことだし、ピンクのほうは彼女のために用意してあるものだからだ。

それはいいのだが、問題はこのセット2つが置かれている位置である......うがい用のコップはぴったりとくっついて並び、歯ブラシは2つが寄り添う形で置かれている。2枚あるタオルは交差して置かれていた......

ものすごくカップル用だ......

それを見て広瀬雫の顔が火照った。そして急いでこのようなおかしな考えを振り払った。おそらく酒井おばさんがこのように置いていたほうが見た目が良いと思っただけだろう。

タオルを使うのは気が引けたので、歯ブラシだけ使わせてもらい、その後適当に顔を洗って振り向いた時、そばにあった黒い下着に目が吸い込まれた。豪華で風格のある洗面所の真ん中に異様な姿の一本線が引かれてあった。そこには黒いブリーフが干してあったのだ......

広瀬雫の顔は血よりも真っ赤に染まり、慌てて視線をそれから外すと、逃げるように風間湊斗の寝室に出て行った。

酒井さんは彼女に朝食を食べるように勧めたが、彼女はそれをやんわりと断った。

彼女は少し片付け
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