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第075話

紗月は冷淡にその小切手を手に取り、しばらく眺めた。「二千万円、すごいお金だね」

「当たり前でしょ」

夫人は鼻で笑った。「いい加減に手を引きなさい。さもないと痛い目を見るわよ!」

「そうね」

紗月は手早く小切手をバッグにしまいながら続けた。「ただし」

「首にかけているその偽物のネックレス、二千万円の価値はなさそうね?」

「偽物」という言葉を聞いた瞬間、夫人は一瞬怯んだが、すぐに冷笑した。「小賢しいわね」

「このネックレスは理恵がくれたものだと言ったから、わざと偽物だって言ってるんでしょ?」

彼女は大げさに目を回し、軽蔑の色を浮かべた。「人の下で使える下賤なメイドごときが、本物と偽物の区別なんかつくはずがないでしょ?」

「理恵は立派な人よ、偽物を買うはずがない。あんたがただ無知なだけ!」

そう言い放つと、夫人は冷たく紗月を睨みつけた。「小切手を受け取ったということは、約束を守るということね。三日以内に青湾別荘を出て行きなさい。理由なんてなんでもいいわ」

「そうしないと、どうなるか分かっているでしょうね?」

そう言い残し、彼女は立ち上がり、使用人に支えられながら優雅に去っていった。

紗月は椅子に座ったまま、夫人の後ろ姿を淡々と見つめた。「おばあさま、忘れずにお会計もお願いね」

「ここはとても高いので、私のようなメイドには手が出ないから」

夫人はドアの前で足を止め、軽蔑しながら「恥を知りなさい」と言った。

そして、再び足早に立ち去った。

夫人が去った後、紗月は一人で部屋に残り、ジャスミン茶をもう一杯注文した。

そのお茶を飲み終わると、すでに半時間が経っていた。

青湾別荘に帰る頃には、外はすでに暗くなっていた。

別荘のドアを開けると、涼介とあかりが一緒にソファに座っているのが目に入った。

涼介は書類を読んでおり、あかりはカーペットの上でパズルに夢中だった。

紗月が入ってくると、あかりはすぐにパズルを放り出し、駆け寄ってきた。「おばさん、どこに行ってたの?あかり、すごく心配してたんだよ!」

紗月はしゃがんで、優しくあかりの頭を撫でながら微笑んだ。「大丈夫よ、お金を稼ぎに行ってたの」

「お金を稼ぐ?」

あかりは不思議そうに目を大きく開けた。「おばさん、パパ以外に誰からお金を稼ぐの?」

「パパの周りの人からもよ」

紗月はにっこり
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