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第083話

涼介が出かけた後、あかりが目を覚まして階段を降りてきた。

ピンク色のキャラクター柄のパジャマを着た彼女は、ぎこちなくテーブルに座りながら言った。「パパ、どうして朝早く出かけちゃったの?」

紗月は少し眉をひそめた。「あかり」

「ん?」

紗月はしっかりと周りを見渡し、家の使用人たちも涼介に付き添って出かけたのを確認すると、深呼吸して声を低くした。「もし、ママがこれからそばにいなくなったら、自分のことをちゃんとできるようにならないといけないわよ」

あかりは目を丸くし、口に運ぼうとしていた小さなワンタンを下ろした。「ママ、どうしてママがそばにいなくなるの?」

「誰かに追い出されちゃうの?」

紗月は曖昧な表情を浮かべたまま、「ただ、あかりが自立できるようになってほしいの」

あかりは無言で口をとがらせた。「あかり、やだもん!」

「自立したら、ママもお兄ちゃんたちもあかりのことを世話してくれなくなるでしょ」

あかりは、ぷくっと頬を膨らませながらワンタンを食べ続けた。「絶対自立なんてしないの。お利口さんにもならないし、大人にもなりたくない!」

紗月はそんなあかりを見つめ、ため息をついた。

彼女は携帯を取り出し、智久から送られてきたジュエリーの材料の配送状況を確認した。

検索結果には、智久が最速で手配したと書かれていたが、海外から桐島市まではやはり距離が遠い。

これらの材料が届くのは、少なくとも明日になるだろう。

そして、2日後は、佐藤夫人の誕生日宴だ。

彼女には一日の猶予しかなかった。

紗月は目を閉じ、対面に座っているあかりを一瞥した。「最近、絵を描いてないんじゃない?」

「絵を描く?」その言葉に、あかりの目が一気に輝いた!

あかりは紗月と同じく、絵やデザインに対して情熱を持っていた。

ただ、あかりは体が弱く、海外にいた時はアトリエにこもって一日中寝ずに描き続けることがあった。

そのため、健康を心配した紗月が彼女に絵を描くのを禁止したのだった。

今、その話題が再び持ち出され、あかりは興奮して椅子から飛び跳ねそうになった。

彼女の大きな瞳には喜びの光が宿っていた。「ママ、絵を描いてもいいの?」

「ええ」

紗月は穏やかに微笑んだ。「早く食べなさい。あとでパパに言って、アトリエを用意してもらいましょう」

『星空』のデザインにはまだ手直し
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