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第087話

煙が部屋に充満してきた。

燃え盛る炎と、息苦しいほどの焦げ臭い匂い。

部屋には燃えやすい物が多く、さらに大量の図面があった。

そのため、火はすぐに広がっていった。

誰が彼女たちを殺そうとしているのか考える余裕はなかったが、紗月には一つだけ分かっていた。絶対に生き延びなければならない!

少なくとも、あかりを生かさなければならない!

紗月は濡れたタオルであかりの全身を包んだ。

部屋の中で見つけたロープをあかりの体に結びながら言った。「海外にいた時に、結城さんから教わったサバイバル知識を覚えてるの?」

「覚えてるよ」

あかりは涙を浮かべながら彼女を抱きしめた。「でも、ママが逃げないなら、ママと一緒に死んでもいいよ。自分だけなんて嫌!」

「いい子にしててね」

「ママには自分なりの方法があるから」

紗月は深く息を吸い込み、「今、外には人がたくさんいるわ。あかりを窓から下ろすからね」

「私たちの階下3階に、優しいおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいるから、彼らのベランダに行って、助けてもらいなさい」

「そして、透也に連絡して、警察に通報するのよ」

「覚えてて。警察が来るまで、おじいちゃんとおばあちゃんの家を離れないでね。分かった?」

紗月は、下の階にも敵が潜んでいるかもしれないと恐れていた。

理恵はすでに手を下しているのだから、あかりに危険が及ばないよう、万全を期さなければならなかった。

「ママ......」

あかりは泣きながら窓辺に押し出された。「響也兄ちゃんの言うことを聞いておけばよかった。ママを帰らせるんじゃなかった......」

あかりは、ママが桐島市に戻ってくれば、パパと和解し、兄妹3人に温かい家を与えてくれると思っていた。

でも、結果はどうだった?

ママは何度も危険にさらされて、自分は何もできなかった......

紗月は無力にあかりの頭を撫でながら微笑んだ。「たとえ反対しても、ママは帰ってきたでしょうね」

「安心して。ママは死なないわ。先に行きなさい」

「うん」

あかりは涙を拭い、慎重にロープをつかみ、少しずつ外壁を降りていった。

海外にいた時、智久から兄妹3人に特訓を受け、あかりはその中で一番優れた。

このサバイバル技術なら、彼女には十分こなせた。

窓辺に立ちながら、紗月はあかりが降りていくのを見守り、同時
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