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第089話

紗月は再び集中治療室へ戻された。

中には医者たちが集まっていた。

病衣を着た男は虚ろにベッドに寄りかかりながらも、目には怒りの炎が燃え盛っていた。

「彼女をここに連れてこい!」

彼の声は弱々しいものの、その語気は強く、まるで周囲の空気を支配するかのような威圧感があった。

紗月は看護師に支えられながら、慎重に人混みをかき分けて病室に入りました。「佐藤さん、呼んでるの?」

その声を聞くと、涼介は厳しく眉を寄せた。

彼は頭をこちらに向け、その鋭い目つきが彼女を突き刺すかのように冷たく光った。「今の言葉、お前が言ったのか?」

「そうよ」

「どういう意味だ?」

涼介の黒曜石のような瞳には、怒りが燃え盛っている。「お前、桜井紗月がどこにいるか知っているのか?」

紗月は腕を組み、冷淡な目つきで彼の険しい顔を見つめた。「知らないわ」

「あれは佐藤さんを早く目覚めさせるために言っただけよ」

そう言って、彼女は少し眉を上げた。「効果は十分だったみたいね」

「貴様!」

涼介はベッドから飛び降りた。

体に繋がっていた管や針が引きちぎられ、鮮血が噴き出し、背後の医療機器が音を立てて床に散乱した。

涼介は駆け寄り、両手で紗月の首を締めつけ、壁に押し付けた。「嘘をつくな!」

「お前、桜井がどこにいるか知っているだろう!」

彼の瞳の中で火が燃え盛っている。「教えろ、彼女はどこにいるんだ!」

紗月は息が詰まり、息苦しさに耐えた。

だが、冷ややかに笑って彼を見上げた。「知らないわ」

「ただ、佐藤さんを刺激して目を覚まさせたかっただけよ。少し動揺しすぎじゃない?」

そう言い終えた紗月は、涼介の後ろに立っていた医者たちを冷たく見つめた。「早く彼を引き離さないと、私はここで窒息死するわよ?」

その言葉に医者たちは一瞬驚いたが、すぐに涼介を引き離そうと駆け寄った。

しかし、誰も予想していなかったことに、重症患者である涼介を、4、5人の医者がかりでも引き戻すことができなかった!

涼介は依然として彼女を壁に押し付け、「前に言ったはずだ、俺の最低条件はどこかと」

「桜井を使って冗談を言うことは許さない。彼女で脅すのも許さない!」

「誰も桜井を傷つけることはできない、口であろうと何であろうと!」

涼介の声は凶暴で、冷酷だった。

もし、紗月が6年前に何が起こっ
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