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第082話

涼介は冷たく紗月の言葉を遮った。「三日後のおばあちゃんの誕生日に、理恵との婚約を解消するつもりだ」

紗月は一瞬固まった。

驚いて顔を上げ、「婚約を解消するって?」と問いかけた。

どうして婚約を解消するの?

あかりのため?

それとも、桜井紗月がまだ生きていることを知ったから?

だが、六年前には彼らは一緒になるために、どんな方法しても彼女を抹消しようとしていたのに。

六年経った今、あかりが現れたからといって婚約を解消するなんて。

あまりに理屈が合わなかった。

きっと、それだけじゃないはずだ。

それは......

紗月は唇を噛み、恐る恐る涼介を見上げて言った。「もしかして......私のせい?」

このところ、涼介は意識的にも無意識的にも、彼女に触れてくることが増えていた。

もし、あかりのためではないなら、それは涼介が紗月を新たな恋人と見なしていて、理恵に飽きてしまったからでは?

涼介は小さく笑ったが、その問いには答えず、逆に聞き返した。「どう思う?」

その言葉には、自信過剰だというニュアンスが含まれていた。

だが、紗月にはそれがどうにも意味深に聞こえた。

彼は黙認したのだろうか?

そう考えると、紗月の心は複雑な感情で満たされた。

一方では、涼介が自分に興味を持ってくれたことに安心感を覚えた。

これで、計画は少しずれてしまったけれど、結果的には望んでいた通りになった。

だが、同時に、これほど早いと思わなかった。

涼介がこんなに早く理恵に冷めたことには、少なからず嫌悪感を覚えた。

この男は、やはり一途に愛することができない人間なのだと。

夢の中で、初めて涼介に心を奪われたあの瞬間が頭をよぎり......

紗月は吐き気を感じた。

紗月は涼介の手を振り払って、急いで部屋を出ようとした。「あかりにご飯を作らなきゃ!」

涼介は目を細めて彼女の背中を見つめたが、追いかけることもなく、言葉も発さなかった。

......

......翌朝、紗月が朝食の準備を終えた頃、携帯に一件の衝撃的なニュースが次々と届いた。

「速報!佐藤夫人、80歳の誕生日を前にして緊急入院!」

「祈りを!佐藤夫人、いまだ救命中!」

「人気女優桜井理恵、手術室前で献身的な看病!」

紗月は眉をひそめ、そのニュースをクリックしようとした瞬間、階段から急な足音
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