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第080話

しかし、佐藤夫人が涼介のそばに留まるための最後の希望だと思うと......

理恵は歯を食いしばり、決心したように言った。「探してみてちょうだい」

「探す必要はないよ」

電話の向こうの女性はため息をついた。「山本氏の作品が少なく、所有者のいない作品はすでに全て贋作を購入した。残っているのはすでに所有者がいるんだよ」

「最近、結城グループの智久社長が持っていると聞いたわ。ちょっと聞いてみるわね」

「お願い」

......

青湾別荘。

昨晩は一晩中雨が降り続き、朝起きると気温が下がっていた。紗月は午前中を使って、あかりのクロークの服を入れ替え、夏服を洗って収納した。

あかりが涼介の元にいる時間は少ないが、この一ヶ月で増えた服の量は、紗月のもとで一年間に買った分を超えていた。

衣類の整理を終え、紗月はもう疲れて、まっすぐ立っているのがやっとだった。

紗月は腰をさすりながらベッドに倒れ込んだ。ちょうどその時、彼女の携帯が鳴った。

電話は智久からだった。

「覚えてる?君が海外に行く前に、僕のところにいろいろ預けたものがあったよね」

紗月は眉をひそめ、頷いた。「ええ、覚えてるよ」

「その中に『星空』というジュエリーセットがあった」

「今日、ある買い手から問い合わせがあってね。彼女は桐島市の佐藤グループの未来の奥様だと名乗り、このジュエリーを佐藤夫人への誕生日プレゼントとして購入したいと言っているんだ」

「だから君の意見を聞いておこうと思って」

紗月は淡々と微笑んだ。昨日見た夫人が身につけていたネックレスを思い出していた。

やはり、夫人は疑心暗鬼になるだろうと思って、あえてそう言ったのだ。

今度は理恵が本物を買おうとしているのか?

「智久、このジュエリーの出どころを知っているでしょう?彼女に売るべきだと思う?」

「僕には構わないよ」

電話の向こうで、彼は軽く笑った。「だけど、相手も全額で買うつもりはなさそうだね」

「面白い提案をしてきたよ」

「彼女は四千万円を払って、僕がこの『星空』を高額で売ったと意図的に噂を流してほしいんだ」

「そうすれば、偽物を本物のように見せかけることができるってわけさ」

紗月はしばらく考え込んだ。

なるほど、うまい手だ。

まず、ジュエリーの所有者がいるという問題がなくなった。智久が『星空』はすでに売
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