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第076話

「そうよ」

紗月は目を上げて彼を見つめ、真剣な表情で言った。「佐藤家の人たちから見れば、私は二千万円の価値があるんだろう」

「給料の引き上げを求めるのは、無理な話じゃないよね?」

「確かに無理じゃないな」

涼介は小切手を置き、体を後ろに預けて、リラックスした姿勢で紗月を見つめた。「この小切手を手にしたのは、給料を上げて欲しいからか?」

二人とも、涼介は座っていて、紗月は立っているのに、涼介の強大なオーラに押され、紗月はまるで彼に見下されているような錯覚を抱いた。

「もちろん」彼女は頷いて、言った。

「私の願いは小さいものだわ。給料を上げてくれれば、それで十分よ」

「二千万円なんて、私のような使用人には多すぎて、受け取り切れないわ」

涼介は立ち上がり、優雅に彼女の前まで歩み寄った。「それだけの理由か?」

「もちろん」

涼介は指を伸ばし、紗月の顎を指で挟み込むようにして、無理やりその深い瞳を見つめさせた。「この金を受け取らないのは、遠慮しているわけではなく、俺から離れたくないからだろ?」

涼介の声は低く魅惑的だった。

紗月の心をそっと揺さぶった。

彼女は顔をそむけて、涼介を見つめようとしなかった。「ご存知のはずよ。目的は佐藤さんじゃないわ」

涼介は軽く笑い、紗月を壁に押し付けた。

彼の体温が伝わってきた。「目的ではなくても、俺に対して何も感じないわけではないだろう?」

涼介が彼女に触れた瞬間、紗月の心拍が狂い始めた。

きっと久しく男性に触れたことがないせいで、こんなに強く反応してしまったのだろう。

「顔が赤いぞ」

涼介の手が紗月の細い腰を掴み、耳元で囁く魅惑的な声が響いた。「やっぱり俺が惜しいんだろう?」

紗月は目を閉じ、必死に抵抗したが、涼介の力からは逃れられなかった。

涼介は昨日のビンタを教訓に、今日はしっかりと紗月を押さえつけ、抵抗の余地を与えなかった。

彼女は唇を噛み、激しく高まる心拍を何とか抑えようとした。「佐藤さん、誤解だわ」

「佐藤さんもわかっているはず、私がここに来たのは自分の目的があるからで、お金のためじゃないわ」

「私のことを調べたでしょ?海外では、ジュエリーデザイナーとして年収が億円以上よ」

「二千万円なんて、眼中にないわ」

その言葉に、涼介は少しだけ動きを止めた。

しばらくして、彼は顔を曇ら
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