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第072話

しばらくして、涼介は手を振って言った。「先に出て行け」

白石は頷き、すぐに部屋を出た。

オフィスの扉が閉まった。

涼介は目を細め、目の前にある二つの調査報告を見つめ、指先で机を軽く叩いた。

少しして、彼は苦笑を浮かべた。

この二つの報告が示している名前は明白だった。桜井理恵だ。

あまりにも露骨すぎた。

理恵はあかりを排除しようとし、あかりの側にいる最も大切な人たちを追い出そうとしているのだ。

涼介は目を閉じた。

理恵――彼の妻、桜井紗月の大切な妹。

桜井は、自分が去っても妹を大切にしてほしいと手紙を残した。

もう一人は、紗月と彼の娘だ。

「桜井紗月、俺にとんでもない難題を残してくれたな」

......

佐藤家の本邸。

理恵はリビングで半時間も待たされていた。

彼女は手に精巧な包装の箱を抱えていた。

「おばあさまはまだ起きていないのか?」

彼女は邸内で悠然と動く使用人たちを見て、落ち着きを失いつつあった。

使用人は軽蔑の表情を浮かべながら彼女を一瞥した。「もうすぐです」

「桜井さん、どうしても待ちたくないなら、先にお帰りになってもいいですよ」

「佐藤夫人も朝早くから客と会うのはお嫌いでしょうし」

理恵は唇を噛み、心の中では不快感が渦巻いていたが、顔には笑みを浮かべたまま言った。「大丈夫、待っているから」

「どれだけ待っても構わないわ」

今日こそは必ず佐藤夫人に会わなければならない!

さらに半時間が経過し、ようやく佐藤夫人が使用人に支えられて、優雅かつ傲慢な態度で階段を下りてきた。

理恵を見た夫人は、最初に微笑み、その後、高慢にリビングのソファーの反対側に座った。「こんなに早くからこちらへ来るなんて、何か用かしら?」

「もちろん、用事があって参りました!」

ようやく夫人に会えた理恵は興奮し、ソファーから飛び上がるように立ち上がった。

彼女は急いで夫人のもとに駆け寄り、宝物を見せるかのように箱を差し出した。「おばあさま、これは海外の有名なジュエリーデザイナー、山本氏が直接デザインし、制作したアクセサリーですよ!」

「山本氏のデザインはすべて一点物で、市場には偽物がたくさん出回っています。このアクセサリーも手に入れるのに時間がかかりました」

「今朝、海外から届いたばかりで、すぐに持ってきてお納めすることにしました
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