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第12話

この瞬間、大沢康介も彼女に気づいた。

「なんで君が?」大沢康介は慌てて彼女の傷を調べた。幸いどれも表面のかすり傷ばかりだった。

大沢康介は吉沢凛子を助け起こして言った。「こんなに遅くに、どうしてこんな所に?」

「ちょっと用事があって」

大沢康介は目の前にある警察署を見て、何か尋ねようとしたが、結局何も聞かなかった。

「どこに住んでいるんですか?家まで送りましょう」

「ご迷惑をおかけしますから、大丈夫です。タクシーで帰りますから」吉沢凛子は直感的に断った。

「迷惑なんかじゃありませんよ。私も今は特に用事はないですし、代行業者とでも思ってくれればいいですから」

大沢康介は言い終わると、車のドアを開けた。

その厚意が断りづらく、吉沢凛子はおとなしく車に乗った。

途中、二人はあまり多くは話さなかった。話は吉沢おばあさんの病状についてが大半だった。

20分後、車は篠崎家の前に止まった。

吉沢凛子が車を降りようとした時、大沢康介は彼女の腕に擦り傷があるのに気づき、急いで彼女の腕をつかんだ。

そして、車に積んであった救急箱を取り出して、彼女の傷口を軽く処理した。

さすが専門家だ。彼は慣れた手つきで、あっという間に薬を塗り終わった。

「明日また病院に来たほうがいいです。もう一度薬を塗り直しますから。感染防止のため、8時間は水につけないようにしてくださいね」

「......」

篠崎暁斗はこの時、隣に止めてあった車の中にいた。助手席に座っている吉沢凛子は知らない男と車の中で一体何をしているのやら。その二人は長い間車から降りてこなかった。

明日は篠崎暁斗の両親の命日だ。20年前彼の両親は交通事故で他界した。その時の犯人は未だ捕まっていない。

だから、毎年この日になると、篠崎暁斗はとても不機嫌になるのだ。

しかも彼はおじいさんのために、国際的にとても有名な医者に連絡し手術をする予定にしていたのに、あの婚前契約書がバレたせいで、どうしても治療を受けようとしないのだ。

今夜、彼は冷静ではないと自分でも分かっていて、だからこそ彼女ともう一度ちゃんと話し合おうと思い、車の中で吉沢凛子が帰ってくるのを待っていたのだ。

なのに、思いがけず、このシーンを目撃してしまった。

夜遅くに飛び出していって、他の男を密会するとは。なるほど元カレが浮気するわけだ。それは
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