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第24話

手術は8時間近くに及び、夜10時過ぎにやっと終わった。

吉沢凛子は水すらも口にせず、その間ずっと手術室の入口に立っていて、足もしびれていた。

そして、ようやく手術室の扉が開いた。

大沢康介は疲れ果てた様子だった。彼はマスクを外し、手術は無事成功したと吉沢凛子に伝えた。

「手術は成功した」と聞いた瞬間、吉沢凛子のピンと張っていた弦が緩んだ。

同時に足の力が抜け、目の前が暗くなりふらふらと倒れそうになったところを、大沢康介が受け止めた。

「大丈夫ですか?」大沢康介は緊張した声で尋ねた。その瞳からは彼女を心から心配している様子が伺える。

「大丈夫です。ただめまいがしただけで」吉沢凛子は大沢康介を押しのけようとしたが、全く力が入らず彼の懐に寄りかかった。

頭がぐるぐる回っていて、ちょっとでも動くと吐きそうだったので、吉沢凛子は動くことができなかった。

大沢康介は彼女の様子を見て、急いで吉沢凛子の襟元のボタンを外し、楽にしてあげた。

この時、誰もいない廊下には彼の胸に寄りかかる女性、この二人だけだった。男は彼女のほうを向き、とても優しい眼差しで見つめた。

しかし、この時ちょうど階段の前にいた篠崎暁斗がこの一幕を見ていた。

おじいさんから今日、吉沢おばあさんが手術をするのだと聞き、しばらく迷ってから、ようやく決心してここに様子を見に来たのだ。しかし、思いもよらずこのような微妙な雰囲気の場面に遭遇してしまったわけだ。

篠崎暁斗は強く拳を握り締めた。

しかし結局、何も言葉を発しなかった。

そして彼らに背を向けて、その場から去っていった。

しかし、飛ぶように速いスピードで歩いていたので、白衣を着た女性とうっかりぶつかってしまった。

「ちょっとどこ見て歩いて......」相田紬は怒鳴りつけようとしたが、篠崎暁斗の超イケメンな顔が目に飛び込んで来た。ただこの時の顔つきはかなり恐ろしかった。

「あなたは......篠崎さん?」相田紬はおばさんから篠崎暁斗の写真を見せてもらったことがある。

その時、彼女は篠崎暁斗は写真を加工していると思っていた。そうでなければ有名人みたいにこんなに格好良いわけがない。でも、この時初めて会ってみると、写真よりもずっとイケメンじゃないか。

「俺はあんたなんか知らない」篠崎暁斗はナンパされるのが大嫌いだった。

「え?ちょっ
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