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第25話

彼は吉沢凛子の風呂上りの色っぽい姿を見て、しばらくぼうっとしてから、やっと我に返った。

「どうして帰ってきたんだ?」篠崎暁斗が尋ねた。

「おばあさんには今夜からヘルパーさんをつけたので、しばらくは私がいなくても大丈夫なんです」

「じゃあ、君は......」

「あの、今夜......」

二人は同時に声を出した。

「先にどうぞ」篠崎暁斗はそう言いながら、ネクタイを外してソファの上に投げた。

吉沢凛子はこの時、篠崎暁斗の襟元に口紅の跡のようなものがついているのに気がついた。

おもわず凝視した。

吉沢凛子は自分でも気づいていなかったが、彼女は篠崎暁斗の前では、すでに妻としての役割に自然となりきっていた。

他の奥さんと同じように、浮気を疑い嫉妬心に駆られた。

他の奥さん方と唯一違うことは、吉沢凛子は篠崎暁斗に説明するように強く言えないことだった。ただ心の中に抑え込むしかない。

「今夜は書斎で休みますか?」吉沢凛子の声はとても素っ気無かった。

篠崎暁斗は服を脱ぐ手を止めた。吉沢凛子は彼に出て行ってほしいと思っているのが分かった。

「風呂に入ったら、すぐ出て行くよ」篠崎暁斗は何か我慢しているような声で言った。

そして、無表情で引き続き服を脱ぎ始めた。

一着、一着と脱いだ服をソファの上に投げ捨てていった。

吉沢凛子は篠崎暁斗が彼女の目の前で服を脱ぐとは思っておらず、急いで背を向け見ないようにした。

篠崎暁斗はパンツ姿で浴室へと向かった。

吉沢凛子はこの時、浴室のドアの前に篠崎暁斗に背を向けて立っていた。

篠崎暁斗は彼女の後ろに来ると、突然彼女の耳元で話しかけた。「君がここに突っ立ってるのは、俺と一緒にもう一度風呂に入りたいっていう意味か?」

生暖かい息が耳元にかかり、こそばゆくなり、吉沢凛子は心が乱れて急いでその場を離れた。

篠崎暁斗は浴室へと入っていった。

シャワーの音が響き、吉沢凛子はソファの前まで行くと、あのシャツを見つけ赤い印を何度もじっくりと見つめた。最後にそれはやっぱり口紅の跡だと確信した。

しかもその口紅の色は、若い女性が好きな色だ。

篠崎暁斗は浮気している?

吉沢凛子がシャツを持つ手は少し震えていた。林佑樹の部屋からコンドームを見つけた時ですら、このような感覚にはならなかったのに。

あの時はただの怒りで、今は混乱
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