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第23話

思いもよらず、吉沢凛子はそのドイツ語を聞き取ることができた。彼女は大学で第二外国語としてドイツ語を選択し、検定試験1級を持っている。

彼女はとても流暢なドイツ語でドイツ人医師と意思疎通し、おじいさんの病状をすぐに理解した。

「彼はなんて?」篠崎暁斗は吉沢凛子の高レベルなドイツ語に非常に驚いていた。

「おじいさんは今のところ命の危険はないそうです。でも、楽観視はできないですが、ドイツ製の特効薬で少しは緩和できるかもしれないって......」

「じゃ、俺たちが中に入ってじいちゃんの様子を見ることはできるか?」

吉沢凛子は彼に代わって通訳した。

ドイツ人医師は頷き、彼ら二人を連れて救急室へ入っていった。

おじいさんはもう目覚めていて、吉沢凛子と篠崎暁斗が一緒に入ってきたのを見ると、彼らに微笑んだ。

「私は大丈夫だから、心配しないで」

ドイツ人医師スミスの通訳はまだ到着していなかったので、彼は篠崎暁斗と吉沢凛子をオフィスへ招き、ドイツ語に精通している凛子に通訳を頼んだ。

スミスはおじいさんの症例を並べ、篠崎暁斗にその病状の注意点とこれからの治療方針を説明していった。吉沢凛子の通訳のおかげでコミュニケーションがスムーズにいった。

世界的に優れた名医を前にしても、吉沢凛子は臆することなく、落ち着いていた。篠崎暁斗もさすがに彼女のその様子に刮目して見た。

最後に、篠崎暁斗は医者とおじいさんの手術の日程と今後の治療について確認した。

スミスは吉沢凛子の通訳を絶賛し、しごろもどろの日本語で彼女を見目麗しいとほめたたえ、診察時に彼女を専属通訳として雇いたいとまで言い出した。

しかし、吉沢凛子が返事をする前に、篠崎暁斗にやんわりと断られてしまった。

スミスはとても残念そうにしていて、最後に吉沢凛子の連絡先を受け取った。

おじいさんの今の状態を鑑み、病院側は一週間入院して精密検査をすることを提案した。

篠崎暁斗は吉沢凛子がおじいさんの世話をするのは不便なことを思い、一人ヘルパーを雇うことにした。こうすれば、凛子がおばあさんの世話もすることができる。

病室から出ると、篠崎暁斗は吉沢凛子の手を引いた。

「今日は君のおかげで助かったよ。俺......朝は冷静さに欠けていた」篠崎暁斗は口ごもりながら、激怒したことを謝りたかったが、なかなか口に出てこなかった。

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