共有

第26話

おそらく相田紬とぶつかった時に、うっかりついてしまったものなのだろう。それを思い出すと気分が悪くなり、そのシャツをゴミ箱に捨ててしまった。

「明日新しいシャツを買ってくれ」篠崎暁斗は言った。

「これ、どうして捨てるんですか?」

「汚れた」

「汚れたら洗えばいいじゃないですか」吉沢凛子はわざと彼とは真逆の主張をしたようだった。

「じゃあ、洗ったら君の好きにしたらいいさ。誰かにやるとか、どのみち俺はいらん」篠崎暁斗はクローゼットの中からパジャマを取り、着替えながら言った。

「誰にあげるって言うんですか。これじゃ、もったいないです」

「君は誰かに服をプレゼントするのが好きだろう?」篠崎暁斗が振り向いた時、突然ドアにかけてある紳士服が目に入った。

篠崎暁斗はそのドアに近寄り、知らない男の服をちらりと見ると、ひんやりと冷めた口ぶりで言った。「これは誰のだ?」

吉沢凛子はギクリとした。

そして、正直に「今夜、大沢先生が送ってくれる時に、体が冷えたらダメだからって貸してくれたんです。明日彼に返します」と言った。

篠崎暁斗は振り返り、冷ややかな目で吉沢凛子を見て今夜のあのシーンを思い出した。この女は本当に誤魔化すのが上手だ。

「俺に言い訳なんか必要ない。半年過ぎたら、君は俺の人生の中で、ただ一瞬すれ違っただけの赤の他人になるんだからな」

「大沢先生から電話です!」吉沢凛子の携帯が鳴り響いた。

「大沢先生から電話です!」

「......」

電話はずっと鳴っていて止まらなかった。

吉沢凛子は出るしかなかった。

篠崎暁斗は目に失望の色を浮かべ吉沢凛子を一瞥すると、ドアをバンッと開けて出て行った。

「吉沢さん、ずっとあることを、あなたにお話するか悩んでいたんです。私の元カノで水野莉沙というあなたによく似た女の子がいるんですが、一人はアメリカに、もう一人は日本にいるんじゃなければ、あなた達は双子の姉妹なんじゃないかと思うくらいですよ。そうだ、あなた達の年齢も同じくらいで、ただ生まれた日が違うだけなんです。ちょっとお尋ねしたいのですが、吉沢さんの生年月日は身分証に書かれてある通りなんですか?」

大沢康介はしばらく話し続けていたが、吉沢凛子の耳には全く入っていなかった。彼女はさっき篠崎暁斗が出て行く時のあの失望した目つきが、頭から離れなかったのだ。

「吉
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status