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第29話

「吉沢凛子、あなただってバカじゃないんだから分かるでしょ。私はあなたを助けてあげたいのよ」

「あなたのご好意に感謝するわ」吉沢凛子は榎本月香のほうに近づき突然笑った。「榎本月香、帰って林佑樹に伝えなさい。利口ぶるのはやめて。前回の教訓を忘れたの?」

「凛子、それどういう意味よ?」榎本月香は凛子が笑いながらも少し震えているのが分かった。

病院へ行く途中、吉沢凛子は考え込んでいた。もし、林佑樹が遠隔操作で監視カメラの映像を消したとして、それを復元できないだろうか?

この時、彼女の頭に突然、篠崎暁斗の顔が浮かんできた。

病院に着くとおばあさんの様子を見に行った。昨晩、おばあさんは手術を終えたばかりで、体は弱っていたが、吉沢凛子を見た瞬間とても嬉しそうにしていた。

おばあさんは、朝方、吉沢蒼真が彼女を連れてお見舞いに来てくれたと凛子に伝えた。それから、最近凛子が林佑樹について何も話さないから、彼はとても忙しいのじゃないかと聞いてきた。

吉沢凛子はおばあさんに余計な心配をさせたくないので、林佑樹は海外に行っていて来年帰ってくるのだと嘘をついた。

おばあさんは誰かにとられないように林佑樹を早く帰らせなさいとぶつぶつ言った。

吉沢凛子は心の内で苦笑した。

午後、吉沢凛子は篠崎家のおじいさんの様子を見に行った。

そして外来のロビーを歩いている時、突然誰かに呼び止められた。

吉沢凛子が振り返ると、そこには林佑樹と榎本月香がいた。

「なにか用?」吉沢凛子が顔も見たくない二人組だ。

「私たち、おばあちゃんのお見舞いに来たのよ。何度も電話したのに、なんで全然出ないのよ?」と榎本月香は言った。

「誰があんたたちに来てほしいって言った?」吉沢凛子は驚いて言った。「おばあちゃんのお見舞いに行く必要はないわ。帰ってちょうだい」

「もう、なんてこと言うのよ。私たちは一応同級生だった仲じゃないの。あなたのおばあさんが病気になったんだから、私たちがお見舞いに来るのは当然のことでしょ?」

吉沢凛子は呆れ果ててしまった。今までここまで厚かましい人間を見たことはない。

「榎本月香、あんたと林佑樹に裏切られたあの瞬間から、私にとってあんた達はただの通行人AとBよ。これ以上あんた達なんかと関わりたくないの」

「何かあったんですか?」この時、大沢康介がちょうど出勤してきた。私服
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