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第27話

この人は朝っぱらから言いがかりをつけてきて何なの?

吉沢凛子が何も言わないので、篠崎暁斗はもっと怒りが湧いてきた。

「なんで何も言わない?」

「私は何も言うことはありません」吉沢凛子は篠崎暁斗を押しのけて、門を出て行った。

しかし、通りに出たところで、篠崎暁斗の車が追いかけてきた。彼女の前に車を横向きにつけて行く手を塞ぎ、無視しようとしても無駄だと彼女に知らしめようとした。

吉沢凛子は彼のほうへ振り向いた。

篠崎暁斗は何も言わず、助手席の窓を開けた。「早く乗って」

吉沢凛子は彼に構いたくなかったが、体の向きを変えたところでまたクラクションが鳴った。

怒った吉沢凛子は篠崎暁斗の耳を引っ張って中から引きずり出して、一体何がしたいのか聞きたいくらいだった。

この時、会社からまた早く来いと催促の電話がかかってきたので、おとなしく車に乗るしかなかった。

篠崎暁斗は自分の思い通りになって、口角を少し上げ車を発進させた。

そしてあっという間に、吉沢凛子を会社の前まで送っていった。

吉沢凛子は車を降りると、ちょうど入口で彼女を待っていた榎本月香に会った。

榎本月香は車の中をじろじろ見てみたが、篠崎暁斗はサングラスをかけていて、その顔ははっきりとは分からなかった。

「吉沢凛子、こんなオンボロ車で出勤なの!車の中の人ってあなたの新任の旦那様?」

榎本月香はバカにした態度で言った。「お金持ちかと思いきや、こんな安っぽい車を運転してるなんてね」

「あなたに関係ないでしょ?」吉沢凛子は榎本月香の相手をするのは面倒くさかった。

「何怒ってるのよ、あのさ、今回あなた、やらかしちゃったわね」榎本月香は人の不幸を喜ぶように言った。「福留社長にしっかり保管しとくように言われてた現金200万円、あなたがこっそり使っちゃったんじゃないの?これって何て言うか知ってるかしら、窃盗って言うのよ!」

「現金って?」吉沢凛子は最初、何のことだか分からなかった。「それって恵興業株式会社のあのお金のこと?」

「そうよ。今朝福留社長が急ぎでお金が必要で、会社の金庫を開けてみたら、そのお金が消えてなくなっていたのよ。あの金庫はあなたと福留社長しか開けられないでしょ。あなたが盗ったんじゃないって言うなら、一体誰が持っていくのよ?」

「そんなわけないわ。私が休みをもらう前は確かにあったん
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