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結婚相手に応募した日にセレブ社長と結婚しました
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著者: クマちゃん

第1話

真夏の炎天下。

頭から真夏の太陽がジリジリと照りつける中、吉沢凛子はショッピングモールの入り口に立ち、チラシ配りのアルバイトをしていた。

そんな時偶然、入り口から入る一組の男女の姿が目をひいた。

その二人の後ろ姿は凛子の彼氏、林佑樹と自分の親友である榎本月香ではないか?

でも林佑樹は今日、仕事の面接に行くと言っていたはずじゃなかった?

はっとして凛子は急いで二人を追った。

しかし、彼女がショッピングモールに入った時には、二人の姿はもう見当たらなかった。

中を何度も回ってみた後、彼女の携帯電話に突然、ショートメッセージでカード使用履歴が届いた。

それはジュエリーショップの購入記録で、消費額は100万円近くだった。

吉沢凛子はこの数字を見て、気が動転してしまった。これは彼女が半年でようやく稼げる金額なのだ。

吉沢凛子はすぐにそのジュエリー店に飛び込んだ。ちょうど店員がキラキラ光るダイヤの指輪を榎本月香の薬指にはめるところだった。

それは大粒のダイヤモンドで、カットも美しい。まさに吉沢凛子が前々から素敵だと思っていた指輪だ。

榎本月香の満面の笑みに、吉沢凛子は頭の中が真っ白になっていた。

林佑樹が仕事を失ってからこの半年間は、彼女が住む所も食事も提供していたのだ。それなのに、彼女のカードを使って浮気相手にダイヤの指輪を買っている?

彼女の存在は?

すると彼女は彼らのもとに駆け寄り、榎本月香の指にはまっていた指輪を取り上げ、店員に突き返した。

「この指輪は返品します」

「吉沢凛子、あなたどういうつもり?これは私がさっき買った指輪よ。なんであんたが勝手に返品しようとしているのよ?」と榎本月香は大きな声で怒鳴った。

「パンッ!」すると、吉沢凛子は榎本月香の頬を平手打ちした。

「お前、なにやってるんだ?」この時、林佑樹がちょうど支払いを終えて戻ってきた。彼は榎本月香の様子を見て痛ましく思い自分の胸に抱き寄せて、吉沢凛子に怒鳴りつけた。

「ちょっとおまえの金を使っただけだろ、狂犬みたいに人を襲って、恥ずかしくないのか?」と林佑樹は嫌悪感を顕にした。

この瞬間、吉沢凛子は心を砕かれた。裏切られ、怒りと屈辱で彼女は目を真っ赤にさせた。

「私が汗水流して一生懸命働いたお金で、あんたは女に貢いでるんでしょ。恥ずかしいのはそっちのほうじゃないの?」

「俺が貢いで何が悪いんだよ。おまえこそ自分自身をしっかり見つめてみろよ、おまえなんかを好きになる男はこの世にいないぞ!」

この半年、林佑樹を養うために彼女は食事もなるべく節約して、長い間化粧品だって使わず、着ている服も昔からあるものばかりだ。しかし、自分への見返りが、こんな堂々とした裏切りだったとは!

騒ぎを聞きつけて人だかりがどんどん増えていった。林佑樹は激怒してクレジットカードとレシートを吉沢凛子の顔に叩きつけた。

「ほらよ、返してやるよ。金、金、金、おまえにはもう、うんざりなんだよ」

カードで叩かれた顔は痛かったが、それよりも傷ついたのは吉沢凛子の心のほうだった。

「吉沢凛子、おまえみたいな女の末路はな、孤独死なんだよ。おまえを受け入れられるような男はいないからな」と林佑樹は言い終わると、榎本月香を連れて、ショッピングモールから出て行った。

吉沢凛子は一言もしゃべらず、床に落ちたカードとレシートを拾い、返品の手続きを終わらせて、そのまま彼女と林佑樹が住む家に帰った。

その家には部屋が二つあり、林佑樹と彼女はそれぞれ別々の部屋を使っていた。

以前、彼女は林佑樹のことを紳士的な男だと思っていたのだから、笑ってしまう。

部屋に入ると、彼女はすぐに林佑樹の荷物を整理し、彼を追い出す準備をした。

彼女がベッドのシーツを翻した時、使用済みのコンドームを見つけた。

それを見た瞬間、吉沢凛子の林佑樹に対する最後の期待は完全に消滅してしまった。

梱包された彼の荷物は、一つ一つ家の玄関前に置かれていた。

この時、林佑樹は榎本月香を連れて帰ってきた。

そして、荷物を片付けられ空っぽになった部屋を見て、林佑樹の怒りは頂点に達した。

「吉沢凛子、てめえ、頭でもおかしくなったんじゃないのか。おまえに俺の私物に手を付ける資格なんかねえだろ?」

吉沢凛子はリビングのソファに腰掛けていた。以前、彼女は林佑樹がこの世で一番格好良い男に見えていたが、今よく見てみると、ただ気持ち悪いとしか思えなかった。

「ちょうど良いところに帰ってきたわ。あなたの部屋の鍵をちょうだい。もうここへは来ないでくれるかしら、私の場所が汚れちゃうから」

「凛子、何か勘違いしてるんじゃないのか?以前は家賃を俺も出してたんだぞ、なんで俺が出て行かなきゃならないんだ?」と林佑樹は大きな声で怒鳴った。

「あなたも今言ったでしょ、以前のことだって。この半年間の家賃、それから2年半の生活費も私にくれたことあったっけ?」

吉沢凛子は冷静になり、全面的に争う姿勢だ。

林佑樹は、ご近所たちが非難し始めたのを見て、面子を保てなくなり、とりあえずここは穏便に済ませようと言い逃れをしておくことにした。

「吉沢凛子、おまえ金が欲しいんだろ?半年間の家賃って言っても、たったの50万くらいで、俺の一ヶ月半の給料にすぎないさ。仕事が見つかったら、その家賃を返してやるよ」

「半年も待つ必要なんかないわ、今この女にお金をあげましょ」榎本月香は携帯を取り出し、吉沢凛子の前に来ると「こうしましょ、私が半年の家賃を払うわ。あなたは今すぐ出て行きなさい」と言った。

榎本月香はしっかりと計算していた。半年の家賃の半分といっても20万ちょっとで、ここ数年、吉沢凛子のバカ女が出した金額はこれだけではないはずだ。でも、彼女はこうすることで林佑樹に良い印象を与えることができる。

林佑樹は国立の良い大学を卒業していて、能力はある。以前働いていた時には一ヶ月に60万は稼いでいたのだから!

榎本月香は吉沢凛子が快く頷くのを見ると、携帯の送金画面を開き、すぐにお金を送った。

そして彼女は得意げに玄関を指差して言った。「さっさと荷物を整理して出て行きなさい!」

「焦らないで」吉沢凛子はゆっくりと彼らに背を向けると、部屋から不動産権利書を出してきた。

「あなた達しっかり見てみなさい」彼女が不動産権利書を開くと、権利書の名義は吉沢凛子となっていた。

「私はこの家の持ち主よ。今日、この家は返してもらうわ」

「凛子、おまえ俺をハメたのか?」不動産権利書を見て、林佑樹はすぐ烈火のごとく怒った。「おまえが家主だっていうのに、長年俺に家賃を支払わせていたのか?」

「人の家に住むのに家賃を払うのは当然のことでしょう?」吉沢凛子は自分に何の罪があるのかと、肩をそびやかした。

「てめえ、汚ねえ奴!」林佑樹は指先をわなわなと震わせ吉沢凛子を指差した。「以前はおまえのことを甘く見すぎてたよ」

「吉沢凛子、あんた卑怯よ」榎本月香も相当に後悔していた。お金もなくなり、住むところも失ったのだから。

「あなた達と比べたら、私なんてまだカワイイものでしょう」

吉沢凛子はドアを開けて言った。「さっさと荷物を持って、出て行きなさい!」

榎本月香はまだ納得していない様子だったが、林佑樹はご近所が見物に来ているのを見て、すぐに榎本月香の手を引き、去っていった。

その前に後ろを振り向き吉沢凛子を一瞥して、心の中でこの家をどうにか自分のものにできないかと陰謀を企てていた。

クズ男を始末し、吉沢凛子は力なく壁の隅に寄りかかった。

これでいい、今後はもうあのクズ男のために、忙しく働く必要はなくなるのだからと心の中で思っていた。

しかし、一息ついたすぐそばから、携帯が鳴った。吉沢凛子が見てみると、それは弟からの電話だった。

「姉ちゃん、ばあちゃんが癌になって、手術するのに1000万必要なんだって。俺そんなにお金ないよ、俺......」弟は電話の中で声を詰まらせて泣いていた。

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