共有

第16話

「彼は私を騙したりしないって信じていますから」吉沢凛子はそう言った。

その言葉を聞き、篠崎暁斗とその同級生はとても驚いていた。

同級生は自分の夫のへそくりに興味を示さない女がいることに驚いていた。

一方、篠崎暁斗のほうは吉沢凛子が自分を信じていると言ったことに驚いていた。その言葉は彼に少し罪悪感を抱かせた。

同級生の女性はまだ何か言おうとしたが、少し考えてからやめてしまった。本当に篠崎社長を怒らせてしまうと、決して冗談では済まされない。

それで、本来降ろしてもらう予定の場所ではなかったが、その同級生は車を降りた。最後にこれからも連絡を取り合おうと言って凛子のLINEを交換した。

その子が車を降りてすぐ、篠崎暁斗は彼女からメッセージを受け取った。「奥さんとってもきれいね。ちょっとダサいから、あなたには少し似合わないけど」

篠崎暁斗は確認し終わると、メッセージを消してしまった。そして、吉沢凛子を連れてそのままショッピングモールに向かった。

凛子は篠崎暁斗が服を買うのかと思っていたら、彼は彼女に服を買うつもりらしかった。しかも、適当に選んでも一着何十万もするような有名ブランド店へ連れて行った。

吉沢凛子はびっくりして、彼を引っ張って行った。

「この服は高すぎます。一着で私のひと月の給料より高いんですよ」

篠崎暁斗のほうはそうは思っていないようだ。先に試着してみろと吉沢凛子に次々と試着させていった。最後のほうには店員が少しうんざりしていた。

「あの、ご購入されますか?」

篠崎暁斗は全部買ってしまいたかったが、自分の正体を明かせないので、吉沢凛子に一番似合うと思ったブレザーだけを選んだ。

「これにしよう」

吉沢凛子は名札を確認した。36万円?

余裕で彼女の一ヶ月の給料を超えているじゃないか。

彼女は篠崎暁斗を隅の方に引っ張り「今日カード忘れてきたんです。先にご飯食べましょう。お腹すいちゃったんです」

「服を買ったらご飯を食べに行こうか」篠崎暁斗は携帯を取り出し電子決済の支払いコードを開いた。「俺のカードを紐づけしてあるから、この携帯で支払えばいいよ」

「高すぎます。あなたの月給の半分以上ですよ」

「じゃ、半月分は残ってるじゃないか」篠崎暁斗は結婚して一家を支える重要さを理解していない様子だ。

「でも、今月になってまだちょっとしか経って
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status