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第21話

続けてまたドアをノックした。今度は中から篠崎暁斗の不機嫌そうな声が聞こえてきた。「何か用?」

「夜は冷えるから、ブランケットを持ってきました」

吉沢凛子がそう言っても、中からは何の反応もなく、しばらく待ち続け、彼女は寒さに震えてきた。篠崎暁斗はドアを開ける気がないと思い、彼女は背を向けて部屋へ戻ろうとした。

そして、この時ようやく扉が開いた。

篠崎暁斗はボサボサの頭でドアのところに立っていた。彼のシャツは緩み胸元が大きくはだけていて、衰弱しきった様子で今にも倒れそうだった。

「どうしたんですか?」吉沢凛子は緊張して篠崎暁斗の額に触れてみた。

額に触れた瞬間、篠崎暁斗にその手を払われてしまった。

「なんともない」篠崎暁斗は吉沢凛子が持っていたブランケットを受け取ると、ドアを閉めようとした。

吉沢凛子は手を伸ばしてドアが閉まるのを止め、緊張した声で尋ねた。「風邪引いたんじゃないですか?」

「吉沢凛子、もう俺のことを気にかけるフリはしないでくれないか。勘違いしてしまいそうだ......」

「何を勘違いするんですか?」吉沢凛子は、ぽかんとした。

篠崎暁斗は彼女がまだとぼけているのを見て、彼女に期待し過ぎていたと思い、笑えてきた。

この世でおじいさんを除いて、誰が本気で彼のことを気にかけてくれるだろうか?

すると、篠崎暁斗は思い切りドアを閉めた。吉沢凛子は考える間もなく手をドアの隙間に伸ばしたが、少し遅かった。

扉は固く閉じられ、彼女の指二本が挟まれて腫れてしまい、その痛みに叫んでしまいそうだった。

吉沢凛子はまた少し待ってみたが、篠崎暁斗がドアを開けるつもりはないことが分かり、身を翻してその場を去るしかなかった。

翌日、吉沢凛子は朝早く起きて、弟の蒼真に連絡し、おばあさんの手術前検査に付き添うように伝えた。

それから、書斎へ行きドアに鍵がかかっていないのを見て、中へ入っていった。

吉沢凛子はこの時、篠崎暁斗の書斎に初めて入った。中はとてもシンプルで、デスクとシングルベッド、そして壁一面の本棚だけしかなかった。

シンプルではあったが、全ての家具はマホガニーでできていて、高そうなものばかりだった。

デスクの上には風邪薬とコップ半分の水が置かれていたから、篠崎暁斗は朝薬を飲んで出かけたのだろう。

吉沢凛子が部屋から出ていこうとした時、デス
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