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第20話

「相田さんは30万にしてほしいって、これは私たちにはちょっと高すぎますよ」

「じゃあ、相田さんを雇うのをやめればいいんじゃないか。君が家でじいちゃんの世話をしてくれていればいいんだから。そうだ、じいちゃんは明日の午前中、検査に行くから家族が付き添う必要があるんだ。俺は明日の午前中は忙しいから、君が休みを取ってじいちゃんを連れて行ってくれ」

「明日は無理です」

「吉沢凛子、俺が君と結婚したのは、じいちゃんの世話をすることが第一条件だったはずだ。あれもダメ、これもダメって、俺はなんのために君と結婚したんだよ?」

吉沢凛子はぐうの音も出なかった。

「おばあちゃんが手術をするから、明日は病院に言って付き添わないといけないんです。手術が終わったら、仕事を辞めておじいさんのお世話をしますから」

「俺は待てるが、じいちゃんは待てないんだ」篠崎暁斗の目はだんだん冷たくなっていき、怒りを顕にさせた。

「吉沢凜子、わがままを言わないでくれないか。君のおばあさんが病気で世話が必要って、じゃあ俺のじいちゃんは?俺たちが結婚した時、君は俺に何と言って約束した?」

「あの、1000万の結納金をもらった時に、どうしてもっと考えなかったんですか?約束したんなら、ちゃんとやらないと」相田おばさんは傍らで加勢していた。

吉沢凛子の目にはだんだん涙が滲んできた。

昨日は身を挺して彼女を助けた人が、今日はこんなに冷血になってしまった。彼女は彼に期待しすぎていたのかもしれない。

「分かりました。明日おじいさんを連れて検査に行ってきます」と言うと、吉沢凛子は泣きながら走って部屋に戻っていった。

相田おばさんは冷たい声でふんと鼻を鳴らした。「篠崎さん、絶対、あれに騙されちゃあダメですよ。ああいうどこの馬とも知れない女は自分のことばかり考えていて、他人の事なんて一切考えないんですから」

篠崎暁斗は冷たい目で相田おばさんを見た。「相田さん、どんな事にも程度というものがあるだろ、やりすぎには気をつけろよ。人を馬鹿にするのもいいかげんにしろ」

篠崎暁斗の全てお見通しだという瞳に相田おばさんはビビってしまった。

吉沢凛子はこの時とても辛く、苦しんでいた。

明日おばあさんに付き添えなくなったからではなく、篠崎暁斗のさっきの態度に耐えられなかったのだ。

もし、篠崎暁斗が彼女にちゃんと相談して
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