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第18話

「それは気にしなくていいよ。君が気に入ってくれたならそれでいいんだ」吉沢蒼真は凛子をちらりと見て、すまなそうな顔をしていた。

三人はエレベーターで一階へと上がっていった。

地下一階を過ぎる時、エレベーターの扉が突然開いた。

とても広い駐車場は多種多様な高級車で埋め尽くされていた。

吉沢蒼真は驚いて息をのんだ。ここは有名な高級車のディーラーが店でも開いているのか?

篠崎暁斗はさっき駐車して、エレベーターのほうへ向かって来ていた。社長専用のエレベーターは従業員用の右側にある。

普段なら、従業員用のエレベーターがこの階に止まることはないのだが、今日はエレベーターがどうやら故障しているらしい。

吉沢凛子はさっき誰かがエレベーターに乗ろうとして、突然後ろを向いたのが見えた。

そして、エレベーターはまた自動で閉まった。

その人を一目見て、吉沢凛子はちょっと見覚えがある気がしたが、すぐに否定した。

あの人はアステルテクノロジーの社長だ。その風格は篠崎暁斗を何人集めても、敵うはずはないだろう。

さっきの一瞬の光景に篠崎暁斗は驚き、全身に冷や汗をかいていた。

そして彼は車の中でまた少し待ってから、エレベーターに乗り一階に上がって行った。

この時には吉沢凛子と蒼真はすでに会社を去っていた。

矢吹佳奈はいてもたってもいられなくなって更衣室に行って、その茶褐色のブレザーに着替えた。彼女はさっき社長を怒らせてしまったので、後で社長が地下から上がってきたら、彼に良い印象を与えようと思っていたのだ。

篠崎暁斗はシワ一つない、ピシッとした紺色のスーツを着てエレベーターから出てきた。サングラスをかけて、颯爽と歩いて行き、彼の放つ大物オーラが一階にいた従業員たちの目を釘付けにした。

「篠崎社長が来たわ。はやく、きちんと立って」

エレベーターの前には8つのセキュリティゲートがあり、その中の一つは篠崎暁斗専用のゲートだ。

矢吹佳奈は受付から出てきて、篠崎暁斗に挨拶をしようとしていた。

しかし、篠崎暁斗は彼女を一目も見ることなく、セキュリティゲートの前で突然振り返ると、彼女の服をじいっと見つめた。

矢吹佳奈は服が汚れているのかと思って、下を向き確認したが、特に汚れてはいなかった。

篠崎暁斗は吉沢凛子に買ってあげた服を他の女が着ているのを見て、怒りは頂点に達していた。
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