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第14話

この民宿は残り一部屋しかなく、二人が夫婦だと分かると、オーナーは親切に彼らを迎えた。

部屋は少し質素で、篠崎暁斗はどうも落ち着かなかった。彼は今までこのような安っぽい部屋に泊まったことがなかったからだ。

吉沢凛子は彼が嫌そうなのが分かり、オーナーにきれいなシーツと掛け布団カバーを借りてきた。

全部、吉沢凛子一人で忙しくしていて、篠崎暁斗は傍らでそれを見ていた。決して彼が手伝わないのではなく、本当にこのような事をしたことがなく、どうすればいいのか分からなかっただけだ。

吉沢凛子も特に気にしていなかった。おそらく今まで誰かの世話をするのに慣れてきていたからだろう。弟の吉沢蒼真にしろ林佑樹にしろ、至れり尽せりの世話をされてきて『自分で身の回りのことができない』ような人間になってしまった。

部屋を片付け終わると、オーナーがカップラーメン二つと漬物を持ってやってきた。

篠崎暁斗はこのジャンクフードを見て、一瞬で食欲がなくなってしまった。

彼はソファの上に倒れこみ、携帯を取り出すと突然メールボックスにアメリカから誕生日のお祝いメッセージが届いた。

彼の手がピクリと動いた。

彼がメールボックスを開くと、見慣れた名前が目に飛び込んできた。藤井杏奈。

「何を見ているんですか?」吉沢凛子は篠崎暁斗がぼうっとしているのを見て、お湯を入れたカップラーメンを持ってやってきた。

篠崎暁斗はすぐにメールボックスを閉じた。

そして「友達から誕生日メッセージが届いたんだ」と言った。

「今日が誕生日なんです?」吉沢凛子はとても驚いた。

彼女はそれから持っているカップラーメンを見て、誕生日にこんなものを食べるのは篠崎暁斗に申し訳ないと思った。

突然彼女は何かを思いついたように、カップラーメンを置いて部屋を出て行った。

外は暴雨となり、海風が轟々と呻き声をあげ、雷が鳴り稲妻が走った。雨はザーザーと窓ガラスを打ち付けていて、肝をつぶすほど恐ろしい光景だった。

この時、雷が落ち、漁村の電線が雷に直撃して一瞬で辺りは漆黒の闇に包まれた。

眠りに就いていた篠崎暁斗は、驚きのあまりぶるっと身震いしてソファから起き上がった。

「吉沢さん、どこにいるんだ?」

しばらく彼女を呼んでも返事はなく、篠崎暁斗は立ち上がって探しに行こうとした。

この時、ドアが開いた。

吉沢凛子は手作り
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