冷酷社長にハマっちゃったら泣かされちゃうよ!

冷酷社長にハマっちゃったら泣かされちゃうよ!

By:  スイカ味の猫Updated just now
Language: Japanese
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婚約者に裏切られた彼女は、夜中に誰の手にも負えないと噂の、ある男の部屋をノックし、一夜限りの快楽に身をゆだねる。 それは彼女にとっては、ただ婚約者に対する当てつけのつもりだったのだが、それがこの男に陥れられ、いくらあがいても出ることのできない落とし穴の中へと引きずり込まれていくのだった。 如月瑠莉(きさらぎ るり)は常葉市で美人として知られていたが、残念なことに彼女はプライドすら捨てて婚約者に尻尾を振る女だとみんなから言われていたのだ。 婚約者に裏切られた彼女はここ常葉市で笑い話になっていた。 彼女のその状況が180度ガラリと変わり、まさか強大な後ろ盾ができるなどと誰が考えてみただろうか。 本来、一夜限りの関係で、それ以降は関わり合うつもりはなかったのだが、この男はその日から執拗に彼女に纏わりついてくるようになる。 ある日の夜、男は彼女の家へと向かった。彼の冷たいその表情からは不満の色がうかがえた。「なんだ?そっちから俺に関わっておいて、逃げる気か?」 そして彼女はこの日から、この男の魔の手から逃れることはできず、毎晩のように求めらるようになるのだった。 誰かこの冷たい男はどうしてこんなに始末に悪いのか教えてちょうだい!!

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第1話

この町の誰もが知っている。如月瑠莉(きさらぎ るり)は恥もなにもかも捨て、瀬戸響也(せと きょうや)に媚びを売る卑しい女だと。だから彼女がセクシーなキャミワンピースを着て、桐生剛輝(きりゅう ごうき)がいるホテルの部屋をノックして扉を開けた時、彼は驚いた。「瀬戸響也にバレても大丈夫なのか?」瑠莉は自嘲的な笑い声をあげ、剛輝に自ら積極的にキスをした。キスをした瞬間、男からはタバコの匂いが微かにして、彼女はそれが良い匂いだと感じた。この町では誰もがこの桐生剛輝は遊び人だと知っている。瑠莉が彼のもとへ来たのは、まずこの男が瀬戸響也よりも地位が高く、実力もあり、響也を怒らせるのには十分だったからだ。それから、この桐生剛輝という男は、女遊びをするのも同じ女性と一カ月以上は続かないこともここへ来た理由の一つだった。彼は遊び飽きたらすぐに捨ててしまうタイプだ!瑠莉は自分の容姿やスタイルにかなりの自信を持っていた。それで響也と父親の再婚相手である女性の連れ子が肉体関係を持ったのを知ってから、すぐにこの剛輝のところへ来たのだった。響也は瑠莉が彼に尻尾を振って媚びを売ってくるのを、みんなに自慢していたではないか。瑠莉は世間の人たちに、彼女は瀬戸響也がいないと生きていけないわけではないと知らしめたかったのだ。剛輝はただ少し驚いただけで、すぐに彼の方が主導権を握り、彼女の細い腰をぎゅっと抱き寄せ、彼女を部屋へと連れ込んだ。ドアを閉めると、剛輝は彼女をドアへと押し当て、相手を見下すように不敵な笑みを浮かべた。「後悔するなよ」「あら、桐生さんったら何をそんなにもたもたと……、あ……」彼女が話し終わる前に、剛輝は彼女の唇を塞ぎ、彼女を抱きかかえベッドへ放り投げた。男が自分の体に覆いかぶさると、瑠莉は心の奥底でびくびくしていた。しかし、幸いなことに剛輝はこっち方面に関してはかなりの手練れで、最初に挿入される時には少し痛みを感じたが、それ以外は何も痛みは感じなかった。言ってしまえば、彼とのセックスはなかなか良かった。ただ剛輝は一体どういうわけか、明らかに彼と女性関係のゴシップは有り余るほどよく聞くというのに、今はまるで飢えた獣のように彼女を求めていた。2時間行為が続き、彼はようやく動きを止めた。瑠莉はその時には完全に疲れ切っ...

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40 Chapters
第1話
この町の誰もが知っている。如月瑠莉(きさらぎ るり)は恥もなにもかも捨て、瀬戸響也(せと きょうや)に媚びを売る卑しい女だと。だから彼女がセクシーなキャミワンピースを着て、桐生剛輝(きりゅう ごうき)がいるホテルの部屋をノックして扉を開けた時、彼は驚いた。「瀬戸響也にバレても大丈夫なのか?」瑠莉は自嘲的な笑い声をあげ、剛輝に自ら積極的にキスをした。キスをした瞬間、男からはタバコの匂いが微かにして、彼女はそれが良い匂いだと感じた。この町では誰もがこの桐生剛輝は遊び人だと知っている。瑠莉が彼のもとへ来たのは、まずこの男が瀬戸響也よりも地位が高く、実力もあり、響也を怒らせるのには十分だったからだ。それから、この桐生剛輝という男は、女遊びをするのも同じ女性と一カ月以上は続かないこともここへ来た理由の一つだった。彼は遊び飽きたらすぐに捨ててしまうタイプだ!瑠莉は自分の容姿やスタイルにかなりの自信を持っていた。それで響也と父親の再婚相手である女性の連れ子が肉体関係を持ったのを知ってから、すぐにこの剛輝のところへ来たのだった。響也は瑠莉が彼に尻尾を振って媚びを売ってくるのを、みんなに自慢していたではないか。瑠莉は世間の人たちに、彼女は瀬戸響也がいないと生きていけないわけではないと知らしめたかったのだ。剛輝はただ少し驚いただけで、すぐに彼の方が主導権を握り、彼女の細い腰をぎゅっと抱き寄せ、彼女を部屋へと連れ込んだ。ドアを閉めると、剛輝は彼女をドアへと押し当て、相手を見下すように不敵な笑みを浮かべた。「後悔するなよ」「あら、桐生さんったら何をそんなにもたもたと……、あ……」彼女が話し終わる前に、剛輝は彼女の唇を塞ぎ、彼女を抱きかかえベッドへ放り投げた。男が自分の体に覆いかぶさると、瑠莉は心の奥底でびくびくしていた。しかし、幸いなことに剛輝はこっち方面に関してはかなりの手練れで、最初に挿入される時には少し痛みを感じたが、それ以外は何も痛みは感じなかった。言ってしまえば、彼とのセックスはなかなか良かった。ただ剛輝は一体どういうわけか、明らかに彼と女性関係のゴシップは有り余るほどよく聞くというのに、今はまるで飢えた獣のように彼女を求めていた。2時間行為が続き、彼はようやく動きを止めた。瑠莉はその時には完全に疲れ切っ
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第2話
そして、彼女は藤崎琴葉(ふじさき ことは)のLINEを開いた。「ちょっと、瀬戸響也とヤッたの?結婚してから処女を卒業するって言ってなかったっけ?」瑠莉は笑い声をあげて、彼女に返信した。「誰が瀬戸響也って言ったのよ?まるで私にはあいつしかいないみたいじゃないの」彼女がそのメッセージを送ってすぐ、琴葉から電話がかかってきて、叫び声をあげた。「うそでしょ、瑠莉。突然どこから勇気が湧いてきたのよ?まさかあのクソ男をふったって?」ほらみろ、誰が見ても瀬戸響也はクソ男だと認めているではないか。彼女は当初、このクソ男の虜になってしまい、彼は他の男とは違うと思い込み、好きになりすぎて抜け出せなくなってしまったのだ。そして、夢から覚めてみれば、自分がおかしかったのだと気づくのだ。しかし、それは今や重要なことではない。彼女は「うん」とひとこと答えた。「そうそう、その通りよ、他の人にもそう伝えてね。私が響也をふったの」瀬戸響也という男は最も面子を気にする男だ。彼女は響也に恥をかかせるためにやったのだった。「その人は誰よ?」と琴葉は尋ねた。瑠莉は痛む肩を揉みながら言った。「帰って着替えなくちゃ。後で会社で会いましょ」琴葉は「うん」とひとこと言った。「そうだ、今日は大口顧客に会うんだから、早めに会社に来なさいよね」電話を切って、瑠莉はホテルを出た。しかし、一階に下りて、昨夜車を運転して来たのではなくて、タクシーを使って来たことを思い出した。彼女は腕につけている時計を見て時間を確認した。この時間はタクシーでは間に合わない。どうしようかと考えている時に、突然、見慣れた車が彼女の横に止まった。車の窓がゆっくりと開き、車に乗っている剛輝が顔を出した。彼女は少し驚いていた。そして剛輝が「車じゃないのか?」と尋ねるのを聞いた。瑠莉は頷いた。剛輝が自分を車で送ってくれるのかと期待していたら、この男、口角を上げてニヤリと笑い「そうか、だったらタクシーでも呼んだらいい。俺はこれで失礼する。じゃあな」と言った。瑠莉「????」彼女は遠ざかっていく黒い車を見つめ、力を込めて足元にあった石を蹴飛ばした。「男ってやっぱりどれも同じなのね。ヤるだけヤったらその後はお構いなし!」そして、彼女がタクシーを呼んで、如月家の邸宅に帰った時、まさか響
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第3話
響也は慌てて萌香の体を支えた。瑠莉は彼女に見向きもせず、踵を返して去って行った。この二人を見ただけで、身の毛もよだつ。彼女が去る時、後ろから邦博の怒鳴り声が聞こえてきた。「瑠莉、待ちなさい。あの男とは一体どういうことなんだ!?」ほら、彼女の実の父親は永遠に彼女が間違っているとしか見ようとしない。彼女は萌香と響也が抱き合ってキスをしていたと言ったのに、父親の耳にはまるで聞こえてなかったかのようだ。しかし、彼女はもうこれに慣れてしまっていた。5年前のあの日、継母が萌香を連れて如月家にやって来た時から、彼女はこの家の中で立場などなくなったのだ。実の母親の私物がこの人間たちに壊されるのを恐れていなければ、こんな家などとっくの昔に捨ててやったというのに。彼女は気持ちを整えて、会社に着いた時、琴葉が近寄ってきた。「瑠莉、お客様がいらっしゃったわよ。社長自らいらっしゃったんだもの、きっと今回の提携を重要視しているんだわ。あなたが指名されてるんだから、頑張ってね!来月、商談が成功してボーナスをもらえるかどうか、ヨーロッパ旅行できるかどうか、あなた次第よ!」瑠莉が会議室に入ると、すぐに対面に男性が座っていた。彼女は仕事において、昔からずっと効率的で素早くこなし、堂々としたものだった。しかし、今回は初めて少し戸惑い足がすくんでしまった。彼女は今日ここに来るのが桐生剛輝だとはまったく想像もしていなかったのだ。彼は立ち上がり、冷たく無表情の顔で淡々と手を差し伸べてきた。「如月社長、お初にお目にかかります」その声色と口調は、彼女が昨晩一緒にベッドを共にした時の彼のそれとはまったく異なっていた。瑠莉はハッとして、キリリと顔を真面目な表情に切り変え、彼へ手を伸ばした。「桐生社長にお越しいただけて、幸いです」ビジネス上の挨拶を交わした後、瑠莉は剛輝の向かい側の席に座り、今回のプロジェクト計画について話し始めた。「今回、我々は『自然のままに』というテーマにしました。こういうテーマにすれば、貴社の商品と同類商品との違いをはっきりさせることができ……」仕事モードに入った瑠莉は、可愛い顔を格別に真面目な表情へと変えた。彼女は生まれつきルックスが良かった。顔は美しく、特に目尻にある泣きぼくろが誰をも魅了する可愛らしい妖精に仕立て上げていた。
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第4話
車の中で彼女は口紅を塗った。こうしてやっと色白の顔に血色が出るのだった。30分後、彼女の乗るタクシーがクラブ・ルグゼスの前に止まった。ヒールを履いて店の中へ進み、個室の扉を開けると、その中には男女が集まってカラオケをしたり、お酒を飲んだりしていた。開けた瞬間、お酒と香水の混じったタバコのきつい匂いがして、彼女は我慢できず咳をした。そして、この中にいるであろう奥村晴を探した。晴は見つからなかったが、ソファに横たわっている響也の姿が目に映った。彼は完全にだらしない格好でソファの上に寝そべり、お酒を一杯、また一杯と口へ流し込んでいた。瑠莉は唇を噛みしめ、心の中で「やられた」と言った。彼女は奥村晴の野郎が、響也のために彼女をここにやって来るよう騙したのを知り、腹を立てていた。背中を向けて帰ろうとした時、響也はすでに彼女に気付いていた。男のぼうっとしていた瞳が瞬時にキラリと輝きを戻し、急いで彼女を追いかけ手を掴んだ。「瑠莉、待ってくれ。ちゃんと話し合おう」瑠莉は冷ややかな顔つきをした。「別に何も話し合うことなんかないでしょ」彼女は掴まれた手を離したかった。響也に触られるとどうも気持ちが悪い。しかし、響也はその手を離そうとせず、続けた。「瑠莉、俺の話を聞いてくれ。俺と萌香ちゃんは別にお前が思ってるような関係じゃないんだ。あの時、彼女に誘われちゃって」「もういい」瑠莉は眉間にしわを寄せて響也のほうを向いた。「そんな正直に言っちゃって、それで私があんたを男として見ると思うの。責任をすべて女に押し付けるような真似をしてどんだけクズなのよ?萌香にはがっかりよ。同じくあんたにもね!」瑠莉は響也に軽蔑の目を向けたかった。しかし、自分の美しい瞳をそのようなことに使うのはもったいないと思い、思いとどまった。響也は言葉に詰まらせた。生まれてこのかた、このような批判を受けたことはなかった。しかも少し前までは瑠莉は彼のことを必死に追い求めていたというのに。だから、彼はプライドが昔から高く、ここまで言われて我慢の限界になり、かなり怒りを溜めていた。「俺はもうお前に謝ったろ、なのにまだそんな態度なのか?まさか本気で俺との婚約を破棄する気か?瑠莉、あの時お前が俺にどう懇願してきたか覚えてないのか。俺はそれでようやくお前と付き合って
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第5話
「あ、すみません、別にわざとお二人の話を聞こうとしたわけではありません」彼は気まずさを隠すかのように鼻に触れた。「お二人、失礼」剛輝がまた鼻に触れ、二人を通り過ぎようとした時、突然瑠莉に手を掴まれた。彼女は剛輝の腕を引っ張り、後ろを振り向いて響也を見た。「あんたさっき私が昨夜誰と一緒にいたか知りたいって言ってたよね?ほら、この人よ!」それを聞いて、強烈な痛みで真っ青にしていた響也の顔色がまたコロリと変わった。そして何を思ったのか嘲笑って、剛輝に言った。「桐生さん、すみません、瑠莉は俺とちょっと喧嘩して機嫌が悪いんです。どうぞ入ってお酒を飲んでください」桐生剛輝は彼ら上流階級の中でもトップクラスの存在だった。家柄も経営しているグループも彼らの中で最も実力を持っている。彼はこの富豪二代目たちの中でも突出した存在だ。若くしてすでに桐生グループの実権を握っている。それで、誰も彼もが恭しい態度で冗談など彼の前では言うことも憚られる。剛輝は軽く眉根を上にあげ、そのまま行ってしまった。瑠璃は手をピタリと止め、剛輝の後ろ姿を見つめた。その瞬間、少し自分がこうしたことを後悔していた。昨夜寝たばかりだというのに、剛輝は彼女を少しも助けることなくそのまま去ってしまった。次の瞬間、彼女は響也の声を聞いた。「瑠莉、お前が俺を怒らせたいのは分かる。だけど、桐生剛輝を巻き込んで、彼を怒らせでもしたら厄介だぞ」その言葉を聞いて剛輝は足を止めた。男は後ろを振り返り響也を上から下まで眺めた。その瞳には凍り付くようなピリッとした冷たさがあった。「なんだ?瀬戸君はつまり、俺が恐ろしい人間だとでも言いたいのか?」響也は一瞬言葉を詰まらせた。「いいえ、そういう意味では」彼がもう一度説明しようとした時、剛輝が瑠莉の前までやって来た。「終わったら、後で君を家まで送ろう」瑠璃「……」「分かったわ」彼女は言った。「もうここに用はないわ」響也はその二人のやり取りを聞いて目を大きく見開き二人を見つめた。剛輝は他人事に首を突っ込むようなタイプではないというのに、さっき瑠莉を家まで送ると言ったか?まさかこの二人は本当に関係を持ったのか?響也の顔はさらに暗くなった。特に彼ら二人が一緒に出て行った時、その顔は怒りで満ちていた。しかし、彼は剛輝に強
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第6話
琴葉は眉をつり上げた。「行けないならそれはそれでいいわ。うちも別に顧客が一社しかないってわけじゃないし、ゆっくりやってきましょ」瑠璃はため息をついて、後部座席に横たわると、一種の無力感に襲われた。実は彼女がいくら強い姿勢を見せていても、たまにやはりどっと疲れてしまうのだ。母親がこの世を去ってからというもの、彼女は常に孤軍奮闘しているような日々を過ごしてきた。気を抜けば誰かから、これでもかといじめられてしまわないかとビクビクしていたのだ。家に着いた時にはもう結構な時間になっていた。今までなら、この時間帯は邦博はすでに就寝している時間だった。しかし、今日に限って彼はまだ寝ていなかった。厳粛な様子でソファに腰かけていた。彼女は父親に気付かなかったふりをしようと思っていたが、邦博は彼女を呼び止めた。「どこに行っていた?なんでこんなに遅く帰ってきたんだ?」瑠璃は彼のほうをちらりと見た。「如月社長様は今日も私に関心を寄せてくださるお暇があるんですね?」実は母親がまだ生きていた頃、邦博は彼女に対してとても優しかった。しかし、その母親が他界してから、萌香と継母の林原安奈(はやしばら あんな)がこの家に引っ越してきた。それからというもの、彼女と邦博の仲は日に日に悪くなっていった。邦博は言葉を詰まらせたが、珍しいことに彼女を叱らなかった。彼は自分の横のソファを叩き、瑠莉に言った。「瑠莉、こっちに来なさい。お前に話したいことがある」長いこと、邦博はこのように自分に対して優しくものを言ったことはなかった。普段と違う様子の時には何かがあるものだ。彼女は邦博が一体何の話があるのか聞いてやろうと思い、聞き分けの良いふりをしてそこへ座った。邦博はため息をついて、口を開いたそばから「瑠莉、お前も分かっているだろう、如月家は今日に至るまでかなり苦労したんだって。お前は……」と言った。「母さんが残してくれたものを私に渡してくれないか?」瑠璃はそれを聞くと、顔色が瞬時に変わった。「ふざけないで!あれはお母さんが私に残してくれた、たった一つのものよ。何を言われたって、あんたになんかあげないわよ!」母親が死ぬ直前、確かに彼女にあるものを残していた。それはただの鍵だ。その鍵が母親が残してくれた最も大事なものをしっかりと守っていた。しかし
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第7話
今日は確かに特別な日だ。なぜなら、母親の5周忌だからだ。3年前から邦博はすっかり忘れてしまっていた。ただ瀬戸麗子だけが覚えていて、毎年のこの日に瑠莉と一緒にお墓参りに行ってくれるのだった。もっと最低なことは、彼女自身も忘れてしまうところだったことだ。彼女は少し携帯を握る手の力を強めた。頭の中で母親がこの世を去る時の光景を思い出し、目を閉じた。麗子はまだ話していた。「瑠莉ちゃん、午後、私たち一緒にお母様のお墓参りに行きましょう」瑠莉「分かりました」彼女は結局麗子の誘いを断らなかった。電話を切って時間を見てみると、まだ朝8時だった。少し考えて、彼女はやはり起きて会社に行くことにした。彼女の会社は最近先行きがあまり芳しくない。しかし、奥村晴は昨日自分にしたことを悪かったと思ったのだろう、彼の会社のほうの仕事を分けてくれた。そして彼はLINEで彼女にご機嫌取りをして謝っていた。「瑠莉ちゃん、怒らないでくれよ。昨日響也の奴が、僕に泣きついてきたものだから、仕方なかったんだよ。これは僕の父さんの会社の取引先なんだけど、僕が会社を引き継いだら、広告関係の仕事は全部君のところに任せるからさ」その言葉の下に、電子版の契約書が添付されていた。「うちの会社の奴に任せとくから、安心してな」瑠莉は眉をつり上げて返事をしなかった。しかし、晴に対して怒ることもできなかった。晴は彼女と小さい頃に知り合った。中学に上がってからはずっと同じ学校に通っていて、自分が昔どれほど響也に熱を上げていたのかもよく知っていた。彼が自分と響也の仲を取り持ちたいと思っているのも、それは仕方のないことなのだ。彼女は彼を愛していた時は自分のすべてを差し出しても惜しくないくらい、深く愛していたが、嫌いになればあっという間に一切興味をなくしてしまうのだった。晴は彼女の性格を熟知しているからこそ、今日このように謝罪してきたのだ。小さなビジネスでも決して逃してはいけない。しかし、晴が仕事を持ってきてくれたとしても、会社の現状では大した効果は得られないだろう。家賃やローンももうすぐ契約更新時期を迎える。彼女は後ろにもたれかかり、疲れたように眉間に手を当てて揉みほぐしていた。少し考えてから、彼女はやはり剛輝と契約についてもう一度話し合おうと思った。そして
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第8話
その画面には剛輝から送られてきた2文字しか映っていなかった。「ない」瑠莉「……」「瑠莉ちゃん、後で響也とデートしていらっしゃいよ」車に乗ると、麗子がにこにこと笑って瑠莉の手を取り言った。瑠莉は運転席に座って運転している男のほうを向き、唇をすぼめて言った。「今夜は商談があるから、また今度にしましょう」響也はそれを聞き、ハンドルをぎゅっと握りしめた。瑠莉が言ったさっきの言葉は、はっきりと断ったわけではないが、彼を避けたい意図があるのだ。以前の瑠莉なら、このような態度を自分にしてきたことはなかったのに。そう思い、響也はまた不機嫌になった。それから少しして車は瀬戸家の前に止まった。帰る時、彼女は礼儀正しく麗子に挨拶をしたが、この日彼女は始終、響也のことを気にする素振りは見せなかった。一度でも浮気をした男は、肥溜めに落ちてしまった靴のように、彼女は本当にもう二度と響也に執着する必要などないのだ。車に乗って、彼女は少し考えてから奥村晴に電話をかけた。電話はすぐに繋がった。この時すでに退勤時間になっていて、晴は一体どこのクラブで遊んでいるのか分からないが、電話から賑やかな音が聞こえてきた。「もしもし、瑠莉ちゃん、もう怒ってない?」瑠莉はニヤリと笑った。「それはあなたが私を手伝ってくれるかどうかにかかってるんじゃない?」晴は笑った。「僕にできることでしたら、何だってお申し付けくださいませ!」瑠莉は言った。「桐生剛輝が今夜どのクラブにいるか調べてちょうだい」晴の交友関係は広い。常葉市にあるクラブなら彼が知らないところはない。さらに彼は剛輝との仲はまあまあ良いようで、剛輝がどこにいるのかを探るのは朝飯前なのだ。晴はちぇっと舌を鳴らした。「まさか瑠莉ちゃん、本当に彼に気があるんじゃないだろうね?」「彼は気安く接することができる人間じゃないぞ」瑠莉の友人として、晴はたまらず彼女に忠告した。「数日前にある女性が彼のベッドに潜りこんで、結果素っ裸にされてホテルから追い出されたらしいぞ」瑠莉は少し驚いた。そんなこと彼女は聞いていないぞ。それと同時に自分はあの日、何の縁もゆかりもないまま桐生剛輝のもとへ行ったのに、よくまあ追い出されずに済んだなと思った。彼女は唇をすぼめ、少し気まずそうに晴に言った。「何言っ
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第9話
しかし、彼女はやはり礼儀正しく頷いて「ええ」と言った。「ほー、じゃあ、やっぱりあなたから彼をふったんだ?」瑠莉は笑った。「諏訪さんって、いつからこんなに噂好きになったの?」彼女が今日ここに来たのは別に自分の噂話をするためではない。今日ここへ来た重要な任務は、どうにかして桐生剛輝のご機嫌を取ることだ。剛輝との今回の契約は何千万円にもなる大口なのだ。無事契約に取り付けたら、自分のこの小さな会社は安泰であることは言うまでもなく、将来的にビジネスを拡大するための基盤作りもできる。晴は彼女の心をよく分かっていて、急いでやって来てその場の空気を和ませた。「諏訪さん、さっき負けた3杯まだ飲み終わってないじゃないですか、さあさあ……」そう言いながら彼は立ち上がって諏訪蒼佑を引っ張って行き、瑠莉にウインクして「僕はよくできるでしょ?」というような誇った顔をしていた。瑠莉は彼に瞬きしてそれに返した。そして、グラスを持って剛輝の近くに寄っていった。彼に話しかけようとした時に、剛輝の隣にいたあの女の子が突然、彼の腕に手を回した。「桐生さん、私ちょっと気分が悪くなったみたいなんです。ちょっとさすってもらえませんか?」その女の子は話している時、目は非常に警戒して瑠莉のほうをじろじろと見ていた。まるで瑠莉が彼女のものを奪おうとしているような感じだ。剛輝はそれを聞いて軽く笑い、低い声で言った。「ん?どのあたりが悪いんだ?ここか?それともここか?」そう言いながら、剛輝の大きな手は非常にせわしなく女の子の腰回りを這い、一目も瑠莉のほうを見なかった。彼女に恥をかかせようとしているのは明らかだ。彼は少し頭を下に傾け、その気だるげな口調の中にも幾分か誘惑するような感じが含まれていた。女の子は恥ずかしげに可愛らしい顔を赤くさせた。「桐生さん、いじわるなんだから」瑠莉はその様子を見て、口角を少し引き攣らせた。彼女は今までに気まずくなるような場面には遭遇してきたが、しかし目の前のこの一シーンは彼女の耳を赤くさせた。「コホン、桐生さん、私がここに来たのは以前お話させていただいたビジネスの件でご相談したいことがあったからです」他人がイチャイチャしているところに割って入っていくのは失礼なことだとは分かっていたが、彼女はやはり口を開いた。これは会社の
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第10話
こちらが何やら騒がしいので、もちろんこの場にいた他の人たちも集まってきた。以前の瑠莉は響也の気持を最優先にしていたので、このような人が集まるところでお酒を飲むことはあまりなかったのだ。だからほとんどの人が初めて彼女がお酒を飲むのを見ているのだった。それで我慢できずに野次馬のようにたかってきて冗談を言っていた。「如月さん、本当にその場の空気が読める人なんだな」瑠莉は心の中でイラついていた。あの何千万という契約のためじゃなければ、彼女もプライドを捨ててその要求に応えるしかないだろう。彼女はグラスを置き、口角を上げてニヤリとしながら剛輝のほうに目をやった。しかし、剛輝は表情一つ変えなかったので、彼女は再びグラスを持って口の中に流し込んだ。この時のグラスは大き目で、彼女も一気に飲んだので、全部は注ぎ込まれずに彼女の唇の端からお酒が零れ落ちていった。褐色のお酒が唇から一気に顎に流れ、それから彼女の真っ白な首元へと進んでいった。そして、鎖骨を通り、彼女の豊満な胸の谷間に流れていった。この時、その場にいた全員の目線が瑠莉の体に注がれていた。だから、剛輝が瑠莉に釘付けになって、ゴクリと唾を飲み込んでいたことなど誰も気付いていなかった。数杯のお酒をお腹の中へと流し込み、瑠莉の顔はだんだんと赤みを帯びていった。しかし、剛輝はまだ彼女を止める気はないようだった。特に彼の傍にいたあの女が彼女の空になったグラスをまた満杯にさせた。瑠莉は剛輝がもういいと言わないので、唇をぐっと噛みしめ、一杯、また一杯と飲み続けた。一体自分が何杯のお酒を飲んだのか分からないが、桐生剛輝、この男、全く止める気はないようだった。その時突然、個室のドアが大きな音を立てて開かれた。中にいた全員が驚いてドアのほうへと目をやった。そこへやって来た人を見て、瑠莉は頭を上げて次のお酒を飲もうとしていたその動作をピタリと止めた。彼女が口を開く前に、響也が先に話し始めた。彼は陰鬱な顔で瑠莉を睨みつけ詰問した。「今夜は商談に行くって言ってただろ。こんなところでか?瑠莉、お前には羞恥心ってもんがないのか?」瑠莉はお酒に酔って少し朦朧としていた目をキリっと冷たくさせ、ピンク色の唇をぎゅっと結び、口を開こうとした瞬間、隣にいた剛輝が先に話し始めた。彼は鼻であざ笑い、笑
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