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第7話

その言葉を聞いた優子は椅子を引き、茶卓を隔てて進の向かいに座った。

峻介たちに対する冷淡な態度とは異なり、進は優子に対して穏やかだった。「君の怪我はどうしたんだ?」

「峻介に押されて、飾りにぶつかった......」

「僕が言っているのは、君の頭の傷のことではない」進は彼女の言葉を遮った。

里美を見送り、病室に戻ろうとしていた峻介は、進の声を聞いて一歩後退し、半開きのドアの隙間から中を覗いた。

優子は冷淡な表情と穏やかな声で他人事のように言った。「高橋直歩が結婚する年齢に達したから、高橋家の人たちは私が直歩のために家や車を買って結納金を出すように求めてきたから、学校の前で揉めたの」

優子は嘘はついていなかったが、話の全てを語っていなかった。

高橋家の人々が霧ヶ峰市に来たのは、優子を探すためだけでなく、優子と直歩の生母である森本彩花を探すためだった。

彩花を見つけられず、優子が大学で勉強していることを知った高橋家の人々は、彼女が働かず、お金を稼いでいないことに激怒した。

高橋健介は優子の父親であることを理由に、校長室で騒ぎ立て、学校に学費の返金を求めた。

優子からお金を得られないと悟った健介は、自分が優子の親であることを利用し、彼女を高橋村に連れ帰った。そして彼女を高値で売り飛ばし、そのお金を直歩の結納金にしようと考えた。

その時、優子は高橋家の人々と喧嘩になったのだ。

優子の顎と首の傷を見て、進は膝の上に置いた手を軽く擦り合わせた。

優子が詳細を話したがらなかったため、彼もそれ以上問い詰めることはせず、組んでいた足を下ろして体を前に傾け、真剣な目で彼女を見つめた。「八年前に言ったことは今でも有効だ。もし峻介を諦めるなら、海外留学の手配をする」

彼女はその目を見つめ返し、膝の上に置いた手をぎゅっと握り、そしてゆっくりと緩めた。

「佐藤家の伯父と伯母が私を霧ヶ峰市に迎え入れたのは、森本家の投資と長期的な支援のためだと知っている。八年前にあなたが訪ねたのも、佐藤家唯一の息子である峻介が私と一緒にいることを望んでいなかったからだ。彼らは表向きには反対できなかったため、森本家に頼んだのだと思う。当時、あなたは私を海外に送って峻介との関係を断ち切ろうとしていた」

彼女は眉をひそめ、白黒はっきりとした瞳に困惑の色を浮かべた。「でも今、峻介は私を忘れ、別に愛する人がいる。今、私を海外に送っても、あなたにとって特に利益はないはずだ」

「君はとても賢い」進は柔らかく説得するように言い、「だが、利益があるかどうかにかかわらず、君と森本家には血縁関係がある」

森本家という言葉に、優子は一気に緊張した。

彼女はきっぱりと言い切った。「私は森本家と何の関係もない。私の存在は彼女にとって地獄の苦しみのような証であり、彼女も森本家も私とは二度と関わらない方がいい」

「今の君の状況は、トラブルに巻き込まれて孤立していると言える。そんな状況でも......君は森本家の助けを受け入れたくないのか?」

進の穏やかな声は、優子の一時的に乱れた感情を落ち着かせた。

「私は高橋村から出て、勉強ができるようになったことを感謝している。森本家と佐藤家にも感謝している。血縁関係に基づいて森本家が私のためにしてくれたことは十分だ。これ以上森本家には借りを作りたくない」

進は初めて優子と会った時、彼女の実の祖父母が「この子は冷淡だ」と言ったことを覚えていた。

しかし、彼は優子を理解していた。彼女の冷淡さは高い道徳心と優しさ、そして母親への深い愛から来ていたことを。

彼女は家族への渇望を抑え、森本家を安心させるために自分を孤児にした......森本家が良心の呵責を感じないようにするため、佐藤家に留まることを選んだのだ。

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