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第94話

「んっ……」高橋優子は目を見開いた。

熱い唇が彼女の唇を押しつぶし、あの夜と同じように強引に彼女の口内を支配し、彼女の歯をこじ開けて舌を絡めてきた。

唾液が交じり合い、高橋優子の感覚は鋭敏になるのとは裏腹に頭の中は真っ白になった。

森本進の馴染み深くもありながらどこか異質な気配に包まれ、高橋優子は恥ずかしさで全身に鳥肌が立った。

彼女の腕の下から感じるのは、男性の火照った体温だった。彼女は慌てて両手で彼を強く押し返そうとしたが、森本進は片手で彼女の両手を制し、防犯ドアに押し付けると、後頭部を抑え込んでさらに深くキスをした。

心の中に押し込めていた獣が解き放たれたかのように、森本進は容赦なく高橋優子の唇を蹂躙し、まるで彼女を丸ごと飲み込んでしまおうとするように貪欲に襲いかかった。

こんなにも親密で隔たりのないキスは、あの夜の記憶を森本進の頭の中に繰り返し再生させた。

彼はあの夜のように制御を失い、彼女を激しく野蛮に手に入れたいという衝動に駆られていた。

高橋優子に対する言葉できない貪欲さ、痴情、そして独占欲は、告白を経てもう抑えきれずに噴き出していた。

理知的で冷静、感情の起伏が少ない森本進も、高橋優子に対してだけは自分を抑えることができなかった。

高橋優子が息ができなくなる寸前で、森本進はようやく彼女の唇を離した。

激しく息を切らしていた高橋優子は、森本進を見上げて、まるで最上級の捕食者に狙われているような錯覚を覚え、身体が震え、身動きが取れなくなった。

眼鏡をかけていない森本進の顔立ちは非常に攻撃的で、深い眉目、高い鼻梁、そして鋭くはっきりとした顔の輪郭が際立っていた。

二人の間には再び言葉が交わされることなく、玄関の雰囲気は抑圧的になり、欲望の暗流が渦巻いていた。

森本進は彼女の腫れた唇を指でなぞり、かすれた声で尋ねた。「今回は、はっきり伝わったか?」

以前森本進が自分の感情を抑えていたのは、佐藤峻介と高橋優子が深く愛し合っていたからで、高橋優子は佐藤峻介が自分の命だと言っていた。

その後、佐藤峻介が記憶を失い、皆が植物人間になった高橋優子を見放したが、森本進だけは諦めなかった。

その後、高橋優子が目を覚ました時、あんなにも誇り高い彼女が自尊心を捨てて佐藤峻介の後を追い、彼の記憶を取り戻そうとする姿は森本進の心を強く痛めた。

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