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第50話

「北田……静子!」

優子は嗚咽しながらかすれた声で呼びかけた。喉が痛み、声を出すのもやっとだった。

「静子……」涙が止まらず、ついに堪えきれず崩れ落ちた。そして静子を抱きしめ、声を上げて泣いた。「寿司とラーメンを作ってくれるって約束したのに!」

峻介なんてもういらない!

本当に彼なんていらない!

静子がただ無事でいてくれればそれだけでいい!

悠斗は葬儀場の外に立ち、優子の悲痛な泣き声を聞きながら目頭が熱くなった。

優子と一緒に育ってきたが彼女が泣いている姿をほとんど見たことがなかった。

たとえ病院で目覚めた時に峻介が記憶を失い、他の誰かを愛していると知ったときでも、彼女はただ涙を拭き「峻介の記憶を取り戻す」と言った。

彼女がこんなにも取り乱して泣くのを見たのは初めてだった。

優子は、他人が言うように本質的に冷たく無情で、どんなことがあっても冷静に対処できる人だと思っていた。

彼は葬儀場の外でほぼ二時間近く立ち尽くした。内部からもう泣き声が聞こえなくなったのを確認してからようやくドアに近づき、手を伸ばして少しだけドアを開けた。

優子は静子のベッドのそばに寄りかかって座り、髪は乱れ、目は赤く充血していた。顔を静子の血の乾いた手にしっかりと押し付け、まるで既に感覚が麻痺してしまったかのように呆然としていた。

悠斗が中に入ろうとしたその時、里美の声がエレベーターの方から聞こえてきた。

「高橋先輩に会ったらちゃんと話してね。静子は高橋先輩の養母なんだから、どんな理由があっても彼女を押しちゃいけなかったのよ……」

優子が来たと知り、里美は腕にギプスをしている峻介を引っ張ってエレベーターから出てきた。

峻介は不機嫌そうに眉をひそめ、胸に吊った右腕を軽く揺らした。「もし僕が彼女を助けなかったら、僕の腕は骨折してなかっただろう?優子の養母が僕を引っ張ろうとしたから、僕が彼女を押したのは当たり前だろ?」

「峻介!」里美は足を止め峻介を睨みつけた。「でも事故が起きて静子が亡くなったのよ!」

峻介は唇をきつく結んだ。もし以前だったら反論していただろう。だがあの夜、優子に薬を盛ったことで芽生えたわずかな罪悪感があった。

または優子が彼と出会わなければ自殺していたことを知り、彼女がこ
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