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第49話

優子は飛行機を降りるとすぐに悠斗に電話をかけた。「静子はどうなったの?」

悠斗は優子に本当のことを言えず、「まだ……手術室にいる」とだけ伝えた。

電話を切った優子は列に並ぶのも待たず、タクシー乗り場で他の人のタクシーを奪った。

正義感が強い運転手は、本来なら優子に並ぶよう促すべきだったが真っ赤な目で病院の住所を告げるのを見るとすぐに出発し、さらには慰めの言葉をかけた。

「お嬢さん、家族が入院しているのか?心配しないで。今の時間なら道は空いてるから、すぐに病院に着くよ」

「うん」と優子は答えた。握りしめた携帯電話の手が白くなっていた。

病院の入り口に着いた。

悠斗は時間を計算しながら傘を差して入り口で優子を待っていた。

待っている間悠斗は足を踏みしめ、何度も心の中でリハーサルを繰り返していた。優子に静子の死をどう伝えるべきなのか。

だが死の知らせはどんなに優しく伝えても痛みを和らげることはできない。

悠斗がまだ言葉を整理している間に優子を乗せたタクシーが病院の入り口に停まった。

優子が車のドアを開けたのを見ると悠斗は急いで階段を駆け下り、傘を優子の頭上にかざした。

「手術はまだ終わっていないの?」優子は不安に駆られながら車のドアを閉め、病院の中へ向かった。「手術室は何階にあるの?」

「優ちゃん!」悠斗は一瞬立ち止まり、優子の腕を掴んだ。

彼女は振り返り、悲しみに満ちた悠斗の顔を見つめた。全身がピンと張り詰めた弓のようになり、喉が詰まったように感じ、かろうじて声を出した。「何……何階なの?」

悠斗は喉を鳴らし、力強く傘の柄を握りしめた後やっと言葉を発した。「優ちゃん、医者は最善を尽くしたんだけど……救えなかったんだ。実は、君が飛行機から降りる前に静子はすでに亡くなってしまったんだ」

優子の頭は真っ白になり、雨が傘に打ち付ける音しか聞こえなかった。全身から力が抜け足が震えた。

彼女の目には涙が溜まり、瞬きさえできなかった。「静子は何階にいるの?」

「もう葬儀場に移されたんだ」

悠斗の言葉が終わると同時に優子は病院の中へ向かって歩き出し、足元がふらついた。

「優ちゃん!」悠斗は素早く反応し、力が入らない優子を支えながら中に入った。

彼は優ちゃんに事の経緯を話しながら一緒に歩いた。「静子が霧ヶ峰市に残ったのは峻介に会うためだった。今日
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