第4話

薬を盛られてベッドに連れ込まれた事件の後、里美は峻介に会うことがなくなり、泣きながら彼に優子には責任を取らせるように迫った。

峻介は大切な恋人を失いたくなかったため、優子とは何もなかったと誓った。

しかし実際のところ、峻介自身も優子と関係を持ったかどうかは覚えていなかった。

最近、彼は二人が会うのを避けようとしていた。それは優子が当夜の出来事を里美に話すのを恐れていたからだった。

里美がコートを着ていなかったのを見て、彼は眉をひそめて低い声で叱った。彼女の腕に薄手のコートを掛け、そのまま彼女を抱き寄せて急いで中に入ろうとした。「行こう......中に入ろう！」

「私は行かないわ！明日は暁市でイベントがあるから、今から空港へ向かうの。明日の夜に戻ってくるわ」里美は峻介の腕を振り解き、彼に笑顔で言った。「今日はあなたに誕生日プレゼントを渡すために来たのよ。誕生日おめでとう！楽しんでね！」

「今日は僕の誕生日だよ。一年に一度しかないんだ！明日の朝、僕が送るよ。いいかな？今日はとても大事なことがあるんだ。今日は他に誰もいない。僕たちだけなんだ！」

峻介は里美が差し出したプレゼントを受け取らず、彼女の手首を握り、眉をひそめながら低い声で懇願した。普段の自由気ままな様子とはまるで別人のようだった。彼はまるで甘える子犬のようだった。

その「他の人」が誰を指しているのか、優子はよく分かっていた。

彼女はマフラーを引っ張って顔を隠し、手をダウンジャケットのポケットに入れて、目を伏せたまま階段から降りていった。

里美は優子の背中を一瞥し、峻介を優しく慰めた。「あなたが今日何をしようとしているのか、みんなから聞いたわ。ごめんなさい峻介お兄ちゃん。今はまだ受け入れられない。私は前に言った通り......あなたが記憶を取り戻しても私を選んでくれるようなら、以前と同じように安心して一緒にいられるの。でも、私たちが結婚した後、あなたがだんだんと高橋先輩との過去を思い出して、私を責めるようになるのは嫌なの」

今日、峻介は里美にプロポーズするつもりで、友達が里美にそのことを教えてしまった。

「優子が何か余計なことを言ったのか？」峻介は怒りに駆られて額に青筋を立てた。里美の説明を待たずに数歩で優子に追いつき、彼女の腕を引っ張って、憎しみを込めながら激しく押し倒した。「また里美ちゃんに何を吹き込んだんだ？！優子、君はなんて嫌な奴なんだ！」

「優ちゃん！」悠斗が叫んだ。

峻介のこの一押しは容赦なく、痩せ細った優子は足を踏み外し、バーの入口にある池の飾りに倒れ込んだ。寒い冬の冷たい池水が彼女を包み込んだ瞬間、額に鋭い痛みが走った。

「高橋先輩！」

里美と悠斗は慌てて池から彼女を引き上げ、座らせた。

「峻介お兄ちゃん、何してるの！」里美はしっかりと優子を支えながら、峻介に叫んだ。

優子はまだ冷たい水の中にいて、頭の中には声が鳴り響き、血が目の隅から滴り落ちていた。

「峻介、君は狂ったのか！」悠斗は優子を起こそうとし、「僕が優ちゃんを病院に連れて行く！」と言った。

悠斗はふらふらとした優子を池から抱き上げた。

彼女はぼんやりした表情で、手を上げてまぶたの上の粘ついた赤いものに触れた。まだ状況が飲み込めないまま、全身が麻痺しているようだった。

峻介も、この一押しが優子を流血させるとは思っていなかったが、それでも彼女を見つめる目がますます憎しみに満ちていた。「なんで死ななかったんだ？死んでいれば......僕は罪に問われて死刑になるだろうけど、君のその気持ち悪い顔を二度と見なくて済むんだ！」