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第44話

午後七時半、研究室の先輩たちは「新しい後輩を迎えるお祝いをしよう」と言い、優子を連れて学校の向かいにある火鍋店に入った。

「今日先生がおっしゃってたんだ!新しい後輩を歓迎するために思いっきり食べていいってさ。先生のおごりだ!」先輩の辰也が笑顔でみんなにメニューを渡した。

「わあ!先生は高橋さんを引き抜いたのがそんなに嬉しかったんだね!こんなに気前がいいなんて!」辰也の彼女である先輩の渡辺綾子がメニューを優子に渡し、「高橋さん早く!あなたの好きな料理をどんどん注文して!普段の先生はとてもケチなんだから!」と笑った。

「辛くない鍋底を頼もう。高橋さんはケガをしているから、辛いものは食べられないんだよ」先輩の森川律子が鍋底を注文している綾子に注意した。

火鍋店は人で賑わい、鍋の蒸気が立ち込め、料理を運ぶ店員たちが行き来していた。お客さんが入店すると流暢な方言で「いらっしゃいませ!」と元気に声をかけた。

先輩たちは森由教授がここ数年で優秀な人材を引き抜くために各地を回った面白いエピソードを話し、笑い声が絶えなかった。

この賑やかな雰囲気に包まれ、優子の表情にも自然と温かさが漂っていた。

午後八時ちょうどに優子と先輩たちが火鍋を楽しんでいる頃、『家族探しの記録』の番組が衛星放送と三大動画サイトで同時に配信された。

火鍋店内でもこの番組が流れていた。

ネットのプラットフォームでの視聴者数は絶えず増加していた。

優子の周りの先輩たちも番組に頻繁に目を向けていた。

静子が高橋家の人々に対し、「直歩の母親が誘拐されてきたことを言え」と詰め寄ったとき、火鍋店で番組を見ていた人々が驚きの声を上げた。

「なんてこった!彼の母親が誘拐されていたなんて!」律子先輩が驚きの声を上げた。

綾子は眉をひそめた。「もし誘拐されたのなら逃げるに決まってるじゃないか!あの婆さんは嫁に良くしたと言ってるけど、嫁が貧乏だから逃げたのと誘拐されたのだとでは全然別の話でしょう?」

辰也さえも不満げに言った。「母親が誘拐されたことを知っているのに、なぜ番組に出演して母親を探すんだ?」

その直後……

「家族探しの記録 誘拐された女性の子供が母親を探すべきか」というキーワードが検索ランキングに急上昇した。

優子はみんながテレビに釘付けになっているのを見て、取り分けの箸で野菜や火を通した
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