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第43話

《家族探しの記録》の収録は水曜日に行われ、週末の8時に霧ヶ峰市のテレビ局や各大ネットプラットフォームで前編が放送される予定だった。

この番組のゲストが誤って里美を階段から突き落とした事件により、数日前からこの回の放送は注目を集めていた。

さらに、誘拐された女性の子供が母親を探すというテーマは社会的にも大きな反響を引き起こした。

三大動画サイトで予約が開始されると予約者数はこれまでのどの回をも上回った。

優子はこれらのことに興味を持っていなかった。

金曜日に彼女は温和で優雅な森由教授と会った。

森由教授は優子に今回の研究テーマの機密内容を説明し、実験データの流出を防ぐために秘密保持契約にサインさせた。その後直接彼女を実験室に案内し、環境に慣れるために何人かの先輩を紹介してくれた。さらに自ら実験室のビルの下まで見送りに来た。

「うちの研究室は時間も人手も足りないから土日も実験室にいるかもしれないけど、君は来たばかりだからまずは環境に慣れて。新年が明けてから正式に参加してもらうよ」

「はい」優子は応じた。

仕事の話が終わると森由教授は優子の生活についても気遣った。「ここはどうだ?光風市には慣れたかい?」

「ええ、とても良いです」彼女は森由教授に感謝の意を込めて笑顔を見せた。「一昨日の夜、新幹線の駅に迎えに来てくれた藤原先輩が言ってました。先生がわざわざ博士生の一人部屋を申請してくださったと。本当にありがとうございます」

「それは当然のことだよ」森由教授は温かい声で答えた。「もし事故に遭わずに2年間も寝たきりにならなければ、教授は君の博士課程を申請するつもりだったんだ。でも心配しないで、ゆっくりやればいい。君が目を覚ましたことで無限の可能性があるんだから」

優子は森由教授の言葉の意味を理解し、感謝の気持ちで頷いた。

「数日後にはもう一人の学生が海外から戻ってくるから、プロジェクトチームの全員が揃う」森由教授の携帯電話が鳴り、彼はそれを一瞥してから再び優子に向き直った。「藤原辰也が君のLINEを追加できないって言ってたから、あとで辰也のLINEを追加して、彼にグループチャットに招待してもらうようにしてね。彼は君の大学の先輩だから、今後生活や勉強で困ったことがあったら彼に相談するといい」

「はい、わかりました。先生」

「頑張れよ、優子!」森由教授は
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