共有

第40話

優子は涙を流す静子の手を引き、霧ヶ峰市テレビ局のビルを出て行った。後ろからは高橋家の人々がテレビ局で騒ぎ立て、放送を阻止しようとする声が聞こえてきた。

「君たちは絶対に優子っていう下品な女とグルなんだ!」

高橋お婆さんは地面に座り込んで太ももを叩きながら駄々をこねていた。「もし放送なんかしたら、私はこの霧ヶ峰市テレビ局のビルから飛び降りるわ!死んで幽霊になっても君たちを許さない!」

その声を聞いて静子は急いで涙を拭い、優子を押し出した。「優ちゃん、早く行きなさい!今高橋家の連中がテレビ局と揉めているうちに早く逃げるのよ!あの人たちに捕まらないようにして!番組のスタッフがあとで私をホテルまで送ってくれるから」

優子は静子のあらい手を握りしめ、安心させるように言った。「私は今晩の新幹線で光風市に行って森由教授に会うわ。光風市で落ち着いたら、家に戻って静子さんと菜奈と一緒にお正月を過ごすから」

静子は何度も頷いた。ポケットからキャッシュカードを取り出し、優子に渡した。「このお金を持って行きなさい。暗証番号はあなたの誕生日だよ」

優子が断ろうとするのを見て静子はさらに言った。「使い切らなかったら、帰ってきたときに返してくれればいいから!私は無学だから光風市にはついていけないけど、少しでも多く持って行ってくれると安心できるわ」

彼女はキャッシュカードを握りしめ、静子に笑顔を向けた。「わかった。持って行くわ」

「優ちゃん、あなたは何も悪くない。あなたは世界で一番優しくて素晴らしい子よ!もしあなたがいなかったら、私もあなたのお母さんも……」静子はさっきの番組で高橋お婆さんが言った言葉を思い出し、また涙が止まらなくなった。「優ちゃんも菜奈も、私はあなたたちを心から愛してるの!高橋家のあの悪い連中の言うことなんか気にしないで」

「わかっているわ。静子さん」

「もういいわ。泣かないで!早く行きなさい!菜奈と私はあなたの帰りを待ってるからね。帰ってきたら、あなたの好きな寿司とラーメンを作ってあげるわ」静子は涙を拭いながら言った。

優子がタクシーに乗って去るのを見送り、静子はポケットの中で握りしめていた優子と峻介の写真をもう一度見た。

優ちゃんは本当に辛い人生を送ってきた。彼女のために何かしてあげなくちゃ。

優子はテレビ局に行く前に自分の荷物をまとめておいた。

ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status