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第38話

観客席にはこの善良そうな家族に同情し、正義感から声を上げる人々が少なからずいた。

剣夜は直步に穏やかに尋ねた。「お母さんはあなたがまだ5歳のときに去ってしまいましたが、彼女のことを恨んでいますか?」

「僕は母さんを恨んでいません。だって…おばあちゃんと父さんから聞いた話では、母さんは自分の意志で父さんと結婚したわけじゃないんです。父さんが20万円借りて、母さんをお嫁さんとして迎えたんです。おばあちゃんも父さんも母さんを大切にしてくれたけれど、母さんは父さんに何の感情もなかった。貧しいところに留まるのが嫌だったんだと思います。僕はその気持ちを理解しています。でも、小さい頃から周りの子はみんなお母さんがいるのに僕だけいなかった。だからすごく母さんに会いたい。どうして僕を捨てたのか母さんに聞きたいんです」直步は声を詰まらせながら話した。

案の定直步の話が終わると、観客席からささやき声が聞こえてきた。

「何?嫁さんが買われたって?」

「人身売買なのか、それとも…親が決めた結婚なのか?」

「まさか、親が決めた結婚じゃないか?」

「たとえ親が決めた結婚でも子供には罪がない」

舞台のもう一方の端で出演を待っていた静子は、観客の議論を聞いて涙目になり、我慢できずに飛び出して大声で問い詰めた。「どうしてあんたたちは皆に言わないの?彩花さんがあんたたちの家に売られたって!」

スタッフが慌てて静子を引き戻した。

この一言で観客はまるで蜂の巣をつついたかのような騒ぎになった。

「何だって?この若者のお母さんが売られたのか!」

「おいおい、知ってるよ。売られた女性の末路はひどいもんだ!」

「そりゃ逃げたくもなるよ!そんなことがあったら誰だって逃げるさ!」

売られた女性の無理やり生んだ子供が母親を探しに来る——この番組で剣夜が最も望んでいた衝撃的なテーマだった。

直步は事態を見てすぐに言った。「この件で父さんは有罪判決を受けて刑務所に入りました。獄中で何年も過ごし、自分の過ちに気づいたんです。今日は母さんに一目会いたくて来たんです。母さんに謝りたい。愚かだったし、法律を知らなかったことが本当に悔やまれます」

「僕の過ちは認める。刑務所で罪を償った。でも子供に罪はない!」健介はおどおどと話した。「死刑にされても文句はない。それが僕の罪だ!でも直步には罪がないんだ!
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