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第33話

優子はお礼を言って車に乗り込んだ。

彼女は高村アシスタントに頼んでスマホの充電コードを借り、ようやくスマホに電源を入れることができた。

電源を入れたばかりの画面には、60件以上の着信が表示されていた。静子からの2件の着信を除き、他は全て同じ番号からのものだった。

峻介だった。

彼女はスマホを握りしめ、峻介がこんなにも電話をかけてきた意図を考えた。

彼女が彼の手配した部屋で別の男性と一緒にいなかったことに気付いたのか?

それとも、悠斗と一緒にいないことに気付いたのか?

いずれにしても心配してのことではないだろう。

優子は自嘲気味に微笑み、静子の電話番号をかけ直した。

「優ちゃん!」静子が電話に出ると隠しきれない嬉しさが滲んでいたが、それでも声を低くして話した。「優ちゃん、警察が調査して松本さんも賠償は必要ないと言ってくれた。私は警察署から出て、今番組の手配したホテルにいるの」

「どのホテルですか?すぐに行きます」優子は答えた。

「ダメだよ、絶対に来ないで!高橋家の人たちもここにいるのよ!」静子は高橋家の人たちが優子にまとわりつくのを心配し、焦ったように言った。「心配しないで。私は今無事だから。番組の収録が終わったらすぐに帰るわ。でも……持ってきた写真を峻介に渡せるかどうかもわからないわ」

優子の手のひらには痛みが走り、昨夜掴んでいた時にできた傷が再び感じられた。彼女は静かに言った。「北田さん、その写真は捨ててください。私と峻介はもう離婚したんです。もう彼とは関係ありません」

静子は驚いた。

しばらくして、電話の向こうから静子の低い泣き声が聞こえてきた。「もっと早く気づくべきだったのよ。優ちゃん、あなたが目覚めてから峻介と一緒に戻ってきたことはなかったし、毎回峻介が忙しいって言ったのも……」

「北田さん、その話はもう過去のことです」優子は静かに静子の言葉を遮った。

「ただ優ちゃんがあまりにも苦労しているのが気がかりで……」静子は長いため息をついた。「あなたは峻介があんなに好きで、彼のためなら命も惜しまなかった。峻介もあなたのことがあんなにも好きだったのに、二人がこんな結果になるなんて」

優子の峻介に対する愛情と想いは、誰の目から見ても明らかだった。

携帯がまた二つ目の着信を知らせた。

優子は他の電話がかかってきたと理由をつけ、静子と
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