第32話

他人に知られれば、進と彼女は近親相姦の罪を背負うことになる。

進は今後どうやって人前に立ち、商業界での地位を保つことができるのか？

彼女は進が森本家を離れたがっていることをずっと知っていたし、森本家が彼女を連れ戻すことを望んでいたのも知っていた。

だから進は昨夜のことを利用し、彼女が実は桜峰市森本家の一人娘だということを公にするかもしれなかった。

それは彼女の実の母である彩花にとってまた新たな災難になるだろう。

彼女は絶対にそんな苦労をかけさせたくなかった。

迷薬を飲んだのは自分であり、進を求めたのも自分だった！

後始末をするのも当然自分の役目だった。

「わかった」進は目を細め、無表情で振り向いた。そしてベッドサイドの時計を手に取り、腕につけながら平静な声で言った。「体の調子はどうだ？高村賢治に病院へ連れて行かせて検査を受けたほうがいい」

優子は進を見上げ、驚きを隠せなかった。

彼女は進がこの機会を利用し、自分に利害を説明して森本家に連れて帰ると思っていた。

冷淡な言い訳まで用意していたが彼はただ彼女の体調を心配しただけだった。

優子の視線に気づいた進は、ゆっくりとネクタイを締めながら彼女を見つめた。その瞳には深い思慮が感じられ、平静を装ったまま感情を隠していた。「君が何を考えているかは分かっているが、私はそんな卑劣なことをしない」

進に見透かされた優子は居心地が悪くなった。「違います。あなたの人柄を疑ったわけではなく、ただ……」

携帯が振動し、進はそれを一瞥したが応答せずにスーツを手に取って着た。

「ホテルの監視カメラは私が対処する。この件が外に漏れることはない。高橋家の人々が番組に出演する件についても心配する必要はない。あの時、森本家は君の母親に対して十分な準備をしていた。彼らが調べられるのは、君の母親が病院で大量出血して亡くなったということだけだ。ただし、君が巻き込まれる可能性はある……」

進は袖口を整えながら続けた。「本当に国外に出ることを考えないのか？外国には君が学べる大学がたくさんある」

優子の成績なら彼が寄付をすれば、どこの学校でも入ることができるだろう。

「助けてくれる気持ちは分かります。でも誰にでも自分の道があります」

特に無理強いはせず、進は次々と電話に出て、通話が終わると優子に言った。「私は桜峰市に急いで戻