第30話

進が何かを言おうとしたその瞬間、彼の指をキスで塞ぐようにし、冷たい手で腕に絡みついた。

進の手の甲には青筋が浮かび、親指の先から始まった痺れが右手を麻痺させ、全身に広がった。

彼は暗い目をして腕を引き抜き、彼女を再びベッドに押し戻した。「優子！」

彼女の目が開き、焦点が定まらない瞳で彼を見上げていた。

窓の外、ネオンの光が交差して彼の彫刻のような横顔を照らし、高い鼻梁と薄い唇が目の前に迫った。彼女は彼が誰であるかを認識した後、鼻声で言った。「森本…森本先生、苦しい…」

「心配するな。病院に連れて行くから」

進は優子の手からネクタイを抜き取った。そして彼女の乱れる両手を縛り、ダウンコートで包んだ。

彼の熱い手、香り、声、その全てが欲望と空虚感を一層強くさせた。

優子は下唇を噛み、耐えきれずに声を漏らし、身を丸めて息を乱した。

彼女は進の手を掴み、かすれた声で懇願した。「助けて！お願い…」

進の動きが止まり、漆黒の瞳は深淵のように暗かった。「優子、僕は峻介じゃない。僕には君を助けることはできない」

峻介の名前が彼女の心の柔らかい部分を刺す針のように響いた。

瑛介の言う通り、薬の効き目は時間とともに強くなった。彼女はもう持ちこたえられず、理性は完全に失われていた。

彼女は今、この目の前の男と愛し合いたいと願っていた。

優子の顔半分はダウンコートに埋まり、もう半分は濡れた長い髪に覆われていた。かすれた痛々しい声で彼の名前を叫んだ。「進、お願い！助けて！」

彼女が彼の名前を呼んだその声は、心の奥で羽根のように軽く触れた。長い間封じ込められていた火山を一気に噴火させ、心の中に熱い溶岩を噴き出させた。

彼の目は暗くなり、呼吸はますます重くなった。

沸騰する熱血が心の中でうねっていた。

進は優子の細い手首を握り締め、手の甲には青筋が浮かび上がった。もう一方の手で彼女の顔に張り付いて濡れた髪を払った。彼は喉を鳴らした。燃え上がる暗い炎が彼の目の奥で揺れていた。「優子、君は後悔しないのか？」

「進、お願い、助けて」

彼女の意識は乱れていた。欲望に満ちた泣き声は彼を堕落させるように誘った。

彼は自分がこのまま堕ちていくことを甘んじて受け入れた。

優子は熱い体に押し込まれ、柔らかいベッドに沈み込んでいくかのように感じた。

骨ばった長い指が彼女