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オープン・リレーション
オープン・リレーション
著者: コボルド

第1話

松井詩が片瀬響人から電話を受けたのは、腰を掴まれて体勢を変えられ、ベッドの上で跪いていたときだった。

後ろからの激しい衝撃に耐えきれず、彼女は壁に頭をぶつけそうになったが、男性が腰を引っ張り、辛うじて痛みを免れた。

普段は穏やかに見える彼だが、ベッドの上では狂気じみていて恐ろしく、松井詩は片手で壁を支え、もう片方の手でスマホのロックを解除した。

画面には「旦那」の二文字が表示されていた。

「誰から?」彼が聞いた。

「君のいとこ」

男は鼻で笑った。「今頃、中田葵と忙しくしてるんじゃないのか?どうしてまだ電話をかけてくるんだ?」

「私に聞かないで」

「それで、出るの?」

松井詩はため息混じりに言った。「出るよ、君こそ退いてくれない?」

しかし彼は退くどころか、さらに強くなった。

だから松井詩が電話に出たとき、声には一定の震えが混じっていた。

「もしもし?」

片瀬響人が彼女に聞いた。「何してるんだ?」

「聞いてわからない?」

「......ジョギング?」

「ベッドでね」

「誰と?」

「来て見てみる?」

「どこに?」

「隣の部屋だよ」

電話の向こうが長い沈黙に包まれた。

松井詩は彼の息遣いを聞きながら、急かすこともなく、ただ待っていた。

電話越しに響くかすかに荒い呼吸音を聞きながら、松井詩は突然、復讐を遂げたような快感に満たされた。

彼女と片瀬響人は10年愛し合い、5年間結婚していた。彼は情熱的な時は命をかけてもいいと言い、冷めた時は他の女性と何のためらいもなく遊び回った。

彼女は彼を取り戻そうと必死だった。

泣いて、すがって、手首を切ってまで、過去15年の関係を忘れて、家族に戻ってくれるように懇願した。

だが片瀬響人は、スマホで浮気相手といちゃつきながら、無情にも言った。「自然界では、力を持つオスは一匹のメスに縛られないものだ。一生一人の女に忠実でいるなんて、動物の本能に反する」

彼女は妥協した。

外で遊ぶことは許した。ただし、家にだけは連れてこないでほしいと。

しかし、彼女が妊娠したとわかったその日が、最後の一撃となった。

片瀬響人に帰宅を頼むために電話をかけたが、出たのは見知らぬ女性だった。彼女は息を切らしながら「今忙しいの、2時間後にかけ直して」と言った。

最終的に、松井詩はビルの屋上から飛び降りた。

子供は死んだ。

そして、彼女の魂も。

その日以来、松井詩は悟ったのだ。

愛なんてくだらない。男が心変わりするときは、相手が劉亦菲だって意味はない。

このどうしようもない世界では、どちらがより下品かが問題だ。

電話の向こうで、片瀬響人はしばらく何も言わなかった。彼女はその沈黙を楽しみながら、わざと追い打ちをかけた。「来ないの?隣だよ、二歩の距離だし」

「HDで生配信、サラウンドで聞こえるよ。安心して、入場料は取らないから」

「きっと驚く相手だと思うよ~」

松井詩は一言一言を投げかけるたびに、心の中がすっきりしていくのを感じた。

彼女は、かつて自分に突き刺さった片瀬響人の刃を、今度は一刺し一刺し返しているのだ。

片瀬響人がこれでどれだけ傷ついたかはわからないが、少なくとも後ろの男性には効果てきめんだった。

彼の動きが突然激しくなった。

松井詩は振り返り、顔をしかめた。「ちょっと、痛いって」

彼はにやりと笑った。「お前に合わせてやってんだよ」

確かに。

片瀬響人にはっきりと聞かせなければ、できるだけクリアに。

「松井詩」電話の向こうで、ついに彼が口を開いた。

「ん?」

「俺を誘ってるのか?」片瀬響人は鼻で笑った。「なら、青青を連れてくるよ。四人なら、もっと刺激的だろ?」

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