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第37話

帰宅した麻生恭弥は、松井詩にこのことを伝えた。

松井詩は一晩中、寝返りを打って眠れなかった。

麻生恭弥は心を痛め、少し後悔した。彼女に話すべきではなかったかもしれない。森阳一に適当に理由をつけてやり過ごせばよかったのだ。

彼は松井詩の腰を抱き寄せ、彼女を自分の懐に引き寄せた。「気にしないで、明日彼に断りに行くから」

「違うの、誰かが私の名前を呼んでいるような気がする」

麻生恭弥は息を呑み、しばらく真剣に耳を傾けた。「いないよ」

「私もわからないの。目を閉じると、誰かが私の名前を呼んでいるみたいなの」

麻生恭弥は中田葵のことを思い出した。「もしかしたら、妹さんに何かあったのかな?」

松井詩はわからなかった。

でも、今は片瀬響人と一緒にいるから、大丈夫だろう。

麻生恭弥は携帯電話を取り、彼女の前に置いた。「そんなに心配なら、電話してみれば?」

松井詩は動かなかった。

「まだ彼女に対して距離があるの?」麻生恭弥は尋ねた。

松井詩は首を振った。「私たちはツインだから、距離なんてないよ」

「じゃあ、彼女にかけてみて」

麻生恭弥は主導権を握り、彼女のために電話をかけた。

電話がしばらく鳴り続けた後、ようやく受け取られた。「もしもし?」

「葵ちゃん、私だ、義理の兄だよ。」

中田葵の声は少し難しかった。「義理の兄」

「最近どう?お姉さんが心配してるよ」

「私はヨーロッパに戻った。」

麻生恭弥と松井詩は少し驚いた。

麻生恭弥は尋ねた。「片瀬響人と一緒に帰ったの?」

「いいえ、」中田葵は言った。「彼とは連絡を取っていない」

「あなたたちは......」

「義理の兄、お姉さんに謝っておいて。会うのが恥ずかしい」中田葵は言った。

麻生恭弥は彼女を慰めた。「じゃあ、国に戻るつもりはあるの?」

「おそらく戻らないと思う。母は年を取ったし、その人も母に良くないから、母がいじめられないか心配で、ここで母を守っている」

松井詩が電話を受け取った。「葵ちゃん......」

中田葵はすぐに我慢できない、泣き出した。

松井詩も心が痛んだ。「私はあなたを責めないけど、どこにいても、自分を大切にしなきゃいけないよ、わかった?」

「お姉さん......」

「うん」

「お姉さん......」

「ええ」

松井詩
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