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第40話

松井詩と麻生恭弥は結婚して半年後、ラッキーはついに自分の犬生の最後の旅を終えた。

準備はしていたものの、松井詩は過去の十五年の思い出がラッキーと共に完全に消えてしまったように感じた。

松井詩はペット火葬センターに連絡し、一人で東京に行き、ラッキーの灰を彼と片瀬響人が初めて出会ったあの大きな木の下に撒いた。

「松井詩、君は松井詩だよね?」

松井詩は来た人を認識した。「家主さん」

十年以上が過ぎ、家主さんの手にはすでに四、五歳の孫がつながれていた。

彼女はにこにこしながら言った。「ここに住むの?」

松井詩は頭を振った。「住むわけじゃない、ただ見に来ただけ」

「そうか、先日君の彼氏がここに住んでいたんだけど、どうして一緒に来なかったのか不思議だった。彼に聞いても教えてくれなかった」

「彼が住んでいたの?」

「うん、半年間住んでいたよ。先月やっと引っ越した」家主さんは尋ねた。「君は知らなかったの?」

「私たちはもう別れたの」

家主さんは少し残念そうに言った。「そうなんだ」

「うん、家主さん、ここはまだ貸していますか?」

「え?ここはすでに君の彼氏......じゃなくて、片瀬さんが買い取ったよ。私はもう家主じゃない、彼が家主だ」

松井詩はふと、片瀬響人が酔った勢いで、彼女を東京の地下に連れて行くと言ったことを思い出した。昔を懐かしむために。

本当に彼は買ったんだ。

家主さんは言った。「ここはもうすぐ立ち退きになるだろうから、見に来てもいいよ。もう二度と見つけられなくなるから」

家主さんに別れを告げ、松井詩は地下を見に行った。

彼女はただ窓から中を覗こうと思っていただけだったが、近づくとドアが開いていた。

彼女はドアを押して入ると、目の前のシーンに驚いた。

彼女の小さなコンロ、ガスレンジ、まな板、そして部屋の中の小さなシングルベッド、さらには彼のゲームコントローラーやその他の細々したもの......

すべてが昔のままだった。

彼女ははっきりと覚えている。東京を離れるとき、彼女はこれらすべてを中古で売り、売れなかったものは捨てた。

片瀬響人はどうやってここを昔のように復元したのだろう?

松井詩は分からなかった。

彼女は知りたくもな
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