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第38話

春野芝は目を開け、少し不安になった。

さっきまで彼女を大切に思っていた男が、急に冷たくなった理由が分からなかった。

彼女は自分が何か間違ったことをしたのではないかと心配し、彼の腕を抱きしめて、甘えたように揺すった。

「片瀬さん、誕生日を祝ってくれてありがとう。これまでで一番幸せな誕生日です」

片瀬響人はずっと遠くを見つめていた。

「どうして幸せだと思う?」

「だって、あなたが特別に花火を打ち上げてくれたから!ディズニーの花火よりも盛大でした!市内のいたるところで見ていたと思います!」

「それだけで幸せなのか?」

「もちろんです」

春野芝は彼の肩に頭を寄せた。「ありがとう、片瀬さん」

「俺に感謝する必要はない。感謝すべき人がいる」

「誰に感謝すればいいの?」

片瀬響人の頭の中には、彼らが東京の地下で空想にふけっていた時の情景が浮かんだ。

その時、彼は何も持っていない少年だった。

彼は松井詩を抱きしめ、下あごを彼女のふわふわの髪の上に置いて、彼女に夢を描いていた。

「詩ちゃん、俺のゲームがリリースされたら、俺はお金持ちになる。 その時、北京の什刹海に行って、ディズニーよりも大きな花火を打ち上げるよ。 お前の名前を花火で描いて、街中の誰もがお前の誕生日を知らせるんだ」

松井詩は彼の胸で大声で笑いした。「いいよ、約束だよ!」

「うん、俺はお前にまた、東京の第 2 環状道路にある中庭付きの別荘を購入したいと思っている。」

「いいね、じゃあ、庭にバラをいっぱい植える」

「それから、お前にローズ・ロイスを買ってあげる。ピンクの」

松井詩は笑った。「でも、運転免許持ってないよ」

「じゃあ、運転手を雇ってあげる」

「いや、知らない人と閉じ込められるのは嫌だ」

「分かった、俺が運転手になるよ」

「えへへ、将来の片瀬さんが運転手になるの?そしたら、私は本当に自慢できる」

「もちろんだ。お前は片瀬の妻なんだから、自慢されるのは当然だ」

松井詩は彼の腕の中で横たわった。「響人、あなたは私にとても優しい」

片瀬響人は一瞬罪悪感を抱き、彼女が少し愚かだと感じた。

明らかに夢のような言葉なのに、彼女はそれを信じている。

「詩
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