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第41話

慎重を期すため、彼は来る前に片瀬の家に立ち寄り、叔母と叔父の使った物品を持参した。これにより、二人のDNAを抽出して警察に照合できるようにするためだ。

法医は麻生恭弥に言った。「他殺の可能性は排除されました。これは刑事事件ではありません」

麻生恭弥は頷いた。「遺体にアルコール成分はありますか?酔っ払って運転していたか、夜間視界が悪くて湖を見えなかったのでは?」

法医は首を振った。「体内にアルコール成分は全くありませんし、我々の推測では、死亡時刻は三日前の昼間で、その時は十分に明るく、見えないはずはありません」

「それは......事故ですか?」

法医は言った。「おそらく自殺です」

「......」

「彼の体内からは大量の睡眠薬が検出され、さらに車内には未燃焼の炭が多くあり、車のドアの隙間は内側からテープで封じられていました。警察は最終的に電動のこぎりでドアを切り取って遺体を引き出しました」

「......」

「死者は必死の覚悟で、これほど多くの方法を一度に使ったと思われます」

麻生恭弥は目を閉じた。

「ただし、我々にはもう一つの発見があります。これは死者の自殺に関係していると思います」

麻生恭弥は尋ねた。「何ですか?」

法医は検査報告書を渡した。「ここを見てください」

その時、麻生恭弥はメールを受け取った。

定期的なメール、片瀬響人からのものだった。

【麻生、驚かせたかな?私の死後のことは頼むよ。両親には知らせないで、彼らには私がヨーロッパに常駐していると思わせて。詩ちゃんにも言わないで。】

......

片瀬響人が中田葵を見つけたのは、ちょうど一年前のことだった。

彼女は手にナイフを持ち、彼の首に突きつけて言った。「片瀬響人、私の姉を裏切ったら、殺すわよ!!! 」

片瀬響人は笑い、全く抵抗しなかった。

「君が殺さなくても、僕はもうすぐ死ぬよ」

「......どういう意味?」

片瀬響人は病気で、肝癌だった。

「最初は肝硬変だった。詩ちゃんには言えなかった。彼女は泣き虫だから、怖がると思って。でも、気がつけばこうなってしまった」

中田葵は呆然としていた。

「どうしてこうなったの?」

片瀬響人は肩をすくめた。「僕
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