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第6話

松井詩は片瀬響人をしばらくじっと見つめた。

十四歳から現在のほぼ三十歳まで、彼女の人生の半分は片瀬響人によって占められていた。

反抗的な少年から現在のビジネスエリートへと変わったが、片瀬響人の容姿は実際には大きく変わっていなかった。

顔の輪郭がよりはっきりし、五官がより立体的になっただけで、彼女は彼の顔から、彼女を骨の髄まで愛していた少年を見出すことができた。

そう、彼女は彼を手放せなかった。

まるで自分の肉体の中に成長した存在を生きたまま引き裂かれるようだった。

「片瀬響人、」松井詩は頭を傾け、笑いながらも目には悲しみが浮かんでいた。「あなたは私を呼び寄せることを望んでいるの?それとも呼ばない方がいいの?」

片瀬響人の顔にあった遊び心のある笑みも少し薄れていた。

松井詩は言った。「私は知っている、あなたは離婚したいんでしょう、中田葵と結婚したいんだ」

彼はうつむき、何を考えているのかわからなかった。

認めることも否定することもなかった。

「私はあなたに執着したいわけではない。ただ一つの答えが欲しい、なぜ中田葵なの?」

......

食事をする場所は麻生恭弥が選んだ。

静かな雰囲気のプライベートダイニング、昭和時代の小庭のような装飾、魚池やアーチ橋、西洋の小さな建物があった。

松井詩は終始無言で、ただ目を赤くしながら外の景色を眺めていた。

片瀬響人はメニューを彼女の前に押し出した。「詩ちゃん、何を食べたい?好きに頼んでいいよ」

松井詩は見ることもせず、「肉じゃが、ポテトサラダ。他はあなたたちが好きなものを頼んで」

これは彼らがその頃毎日食べていた二品だった。

ジャガイモは市場の店主が捨てた古いジャガイモを彼女が拾い、水でちゃんと煮ると、食感がそんなに硬くならなかった。

マヨネーズは隣の隣人からもらったもので、彼はディスカウントストアの店主で、倉庫が水浸しになり、マヨネーズが全部使えなくなったため、全部彼女たちにくれた。

ウェイターは少し困った様子で言った。「うちは広東料理なので、これらはありません......他のものを見てみせんか?」

片瀬響人は財布から札束を取り出し、彼女に渡した。「何とかして」

「......わかりました」

ウェイターはお金を受け取り、丸めてズボンのポケットに詰め込んだ。

片瀬響人は再びメニューを麻生恭弥に渡した。「頼んで」

麻生恭弥は茅台を一本頼んだ。

ウェイターは驚いた様子で「これだけですか?」と尋ねた。

麻生恭弥は「うん」と答えた。

すぐに料理が揃った。

外の惣菜店で百円で売っているポテトサラダ、そして見た目からして即席で煮られた肉じゃが。

麻生恭弥は酒を開け、分酒器に注いだ。

小さな酒杯を二つ取り、片瀬響人の前に置いた。

片瀬響人は顔をぬぐい、苦笑しながら「このシーン、またあの冬の地下室に戻ったみたいだ」と言った。

同じ人、同じ料理、松井詩が着ている服も同じだった。

麻生恭弥は「そうだね」と応じた。

片瀬響人は少し痛みを抱えた表情で深く息を吸い、酒杯を持ち上げて喉を鳴らしながら言った。「詩ちゃん、俺たちは......平和で別れよう」

松井詩は自分の太ももをしっかりと掴んだ。

自分がこんなにも無力だと思うと、悔しさで涙がこぼれそうだった。

片瀬響人はテーブルから数枚のティッシュを引き出し、彼女に渡した。「拭いて」

松井詩は泣き声を抑えながら言った。「片瀬響人、今は私に優しくしない方がいいよ。私が再びあなたに執着するのが怖くないの?」

片瀬響人の手が一瞬止まり、それでもティッシュを優しく彼女の手に押し込んだ。

松井詩は手を挙げてティッシュを投げ捨てた。

「......俺は恭弥に言った、俺たちの財産、不動産、お金、すべてあなたのもの、会社の株も半分あげる。あなたは下半生を安定して過ごせる」

「......」

「ラッキーも君にあげる」

ラッキーは彼らが地下室にいたときに拾った野良犬だった。

そのときはまだ二三ヶ月だったのに、今では十五歳の老犬になり、体調も悪く、毎日寝てばかりで歩くのも困難だった。

彼らはそれがもうすぐ生命の終わりに近づいていることを知っていた。

彼らの感情と同じように。

「他に何か欲しいものがあれば、遠慮なく恭弥に言って。俺が持っているものは全部あげる」

松井詩は冷笑した。「私は中田葵の命が欲しい、あなたはくれるの?」

その声が落ちる前に、甘ったるい声が聞こえた。「誰が私の命を欲しがってるの?」

松井詩は顔を上げ、中田葵を見つけた。

彼女は華やかな衣装を身にまとい、宝石で飾られ、彼女......自分にそっくりだった。

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