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第12話

矢野康也はオフィスの椅子に座り、ポケットから再びあの指輪を取り出した。

「みんなお前が死んだなんて言ってるが、俺は信じない」

矢野夕理、お前のやることは大したもんだな、こんなにも大勢を巻き込んで芝居を打つなんて

偽装して外の男と一緒になりたいんだろうが、この俺が許すと思うな」

彼は指輪に向かって、私が浮気したとヒステリックに罵り、歯を食いしばりながら絶対に許さないと吐き捨てた。

だが、彼はなぜ泣いているのだろう?

矢野康也は一人オフィスで長い時間を過ごし、結局、包帯だらけの阿部龍志のもとを訪れた。

「彼女は......どこだ?」

「遺体はまだ霊安室にある。お前が直接行って確認するまで」

しばらくして、かすれた謝罪の声が部屋に響いた。

「悪かった、さっき、俺が間違ってた」

阿部龍志の返事を待たず、矢野康也はそのまま霊安室へ向かった。

広い部屋には、今はもう私のその一体の遺体しかない。

彼の視線は白い布の上に落ちたが、しばらくの間、手を出すことはなかった。

彼が本当に自分の目で私の遺体を確認したとき、一体どんな感情が湧くのか気になった。新しい恋人のために私の死を喜ぶのか、それとも本当に涙を流すのか。

そう考えていたところ、彼がついに勇気を振り絞って、白い布に手をかけた。ただ、その手はひどく震えており、何度も掴もうとしては失敗していた。

それでも最後には、目を閉じて真実を覆う白い布を剥がした。

とても醜いになった。

もともと火傷で誰だかわからないほど焼かれた遺体は、法医学者による検査が重なったせいで、さらにひどい状態になっていた。

「矢野夕理、お前バカじゃないのか?喧嘩したくせに、なんで戻ってきたんだ?俺はただのクズだぞ、何があってまた戻ってくるっていうんだ?大人しく外にいればよかっただろうが」

男の涙が一滴ずつ私の遺体に落ちていく。

「矢野夕理、誰が死ぬことを許した?お前は俺と豪を捨ててどうするつもりだ?」

矢野康也が泣きながら罵る姿は、まるで追い詰められた獣のようだった。

だけど、私が彼のそんな姿を見ても、ただ疲れるばかりだ。

あの夜、矢野康也には私を炎から救い出すチャンスが何度もあった。

しかし、彼は山口真里衣を喜ばせることしか考えていなかった。

早く彼女と一緒に夕食を楽しみたくて、私のことなど二の次にして、火を残
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