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第9話

夕食を終えた後、山口真里衣は矢野に感謝の気持ちを込めて、彼と息子を自宅に滞在させることにした。

「奥さんは気を悪くしているだけだから、機嫌が良くなったら戻ってくるはず。だから、まずは私の家に泊まって、必要なことがあったら何でも言ってね」

矢野康也は笑顔で「はい」と答えた。

矢野豪は、私が許可しないフルーツのマンゴーをむしゃむしゃ食べながら、山口への好意を言葉にした。

「お姉ちゃん、本当に僕のママになってくれないの?僕のママはマンゴーを食べさせてくれないんだ」

「ええ?豪くんのママはケチなの?これからはいつでもおいで、マンゴーはたっぷりあるよ」

そんな温かい光景を見ていると、自分が育てた息子が裏切り者のように思えてきた。

豪にマンゴーを与えないのは、彼がマンゴーアレルギーだからだ。

幽霊として、今でも、心がまるで折れるように痛み、胸を押さえずにはいられなかった。

矢野康也は山口真里衣と同じベッドで寝なかった。

しかし、それは彼の自制心を示すものではなく、息子がいるからこそ、彼は子供の前で何かをするほど無恥ではなかったのだろう。

深夜の三時、彼はまだ寝ていなかった。

薄暗い部屋の中、携帯の画面から漏れる緑色の光が彼の顔を不気味に照らしていた。

私は好奇心から頭を突き出し、矢野康也がずっと返信のなかったチャットページを見ているのを見つけた。彼の長い指が画面上で叩かれ、最後には一つずつメッセージを削除していく。

彼はしばらく悩んだ後、結局何も送らなかった。

私と何を話したかったのか、それはもう重要ではなかった。

ふと思い出したように、火災現場から拾った指輪を手に取り、それを写真に撮って私に送った。「夕理、この指輪、プロポーズの、よく似てるよね。俺、もしかして販売店に騙された?紹介されたのはどれも世界で唯一のものだって言われたのに、ほぼ同じものを拾っちゃった」

長文のメッセージは日常の愚痴が含まれており、まるで以前の熱恋の頃に戻ったかのようだった。

何事も最初に相手に伝え合っていた。しかし、今回、私は即返信せず、矢野康也に無情な商人を攻撃することもない。

指輪は唯一無二であり、人もまた同じだよ。
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