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第10話

遅れてやってきたアレルギー反応は、息子の体に急速に広がった。

息子の全身に大量の発疹が現れ、呼吸が速くなり、ベッドで嘔吐してしまった。

異変に気づいた矢野康也は慌てて照明をつけ、息子を抱きかかえて病院へ急ごうとした。

部屋を出る際、思わず内に向かって「夕理、子供が病気だ、早く来てくれ!」

と呼びかけたが、現れたのは深夜にもかかわらず、きちんと着飾った山口真里衣だった。

彼女は薄着のキャミソール姿で、裸足のまま寝室から出てきた。

山口真里衣が眉をひそめるのを見て、矢野康也も自分が間違ったことに気づき、慌てて謝罪した後、彼女の同行を断り、子供を抱いて病院へ急いだ。

幸いにも、迅速な治療のおかげで息子は命を取り留めた。

急診の医者は眠っている子供を心配そうに見つめ、矢野康也に向かって声を抑えつつ叱責した。

「子供はもう六歳ほどでしょう?あなたは父親なのに、息子がマンゴーアレルギーだって知らなかったんですか?もし先に嘔吐しなければ、今夜は私たち二人とも寝られなかったかもしれませんよ!」

矢野康也は珍しく反論せず、うつむいて謝罪し、次からは気をつけると約束した。

病室を出た後、彼は慣れた手つきで私の電話番号にかけたが、応答なしの音が響くだけだった。

矢野は顔をしかめ、携帯のメッセージで私に向かって母親としての無責任さを責め立てた。

「一体何を拗ねているんだ?

妊娠のことは不問にしてもいいが、息子がこんなに具合が悪いのに、お前はまだ来ないのか?」

「離婚なんて絶対に認めない。外にいるあの男なんて、一生日の目を見ることはない!」

ただの嫌がらせのつもりの言葉だったが、この男は今でもその言葉を覚えている。

私が外で誰かと関係を持っているかどうかなんて、彼が知らないはずがないのに。

初めての恋愛、初めての手繋ぎ、初めてのキス......

愛に関するすべての「初めて」を彼に捧げた。

交際三年、結婚七年。私の真心は、たった三ヶ月しか知らない女同僚には敵わなかった。

私は目の前にいる矢野康也が、本当にかつて私が命を懸けるほど愛した人なのか、疑問を抱き始めた。

だが、この疑問に意味はない。

彼が山口真里衣を喜ばせるために、私が心血を注いで整えた家を自らの手で焼き払った瞬間、彼との夫婦の情は、すでに断ち切られていたのだから。
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