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第3話

私が携帯を手にしてバスルームから出てきた彼を問い詰めた時、返ってきたのは怒鳴り声だった。

「誰が俺の携帯を触っていいって言ったんだ!これはプライバシーの侵害だ。俺に少しは個人のスペースをくれないのか?」

だが、付き合っていた頃は、矢野康也は「毎日でもチェックしてほしい」と言っていた。それが彼の心には私だけしかいないことの証明だと、誓ったのだ。

それなのに、たかが十年も経たずに、彼は私を無理やりだと決めつけて激しく叱りつけた。

私と彼の言い争いに、隣の部屋で寝ていた息子が目を覚ました。

眠たそうな目で怯えながら私を見つめ、泣きながら「パパがいい、山口お姉ちゃんがいい」と叫び、私という実の母親だけは拒絶した。私がこれまで手塩にかけて育ててきた息子がだ。

何とも言えない苦しさが胸の奥から喉元に込み上げ、言葉を失ってしまった。しばらくして、私は矢野康也の後ろに隠れた息子を見つめて、こう尋ねた。

「豪くん、ママがいいか、パパがいいか?」

すると彼は、「怖いママはいらない、山口お姉ちゃんがママになってほしい」と言ったのだ。

私は完全に失望し、迷わず荷物をまとめ、別荘を離れた。

それから三か月間、私は家を出ていた。

妊娠が発覚した時、妊娠中絶も考えたことがある。

しかし、矢野康也はいつも「おとなしい娘が欲しい」と囁いていたし、あの手のかかる息子ですら、「妹はまだ来ないの?」と口にするようになっていた。

結局、私は心を許し、二人としっかり話をしようと決心した。

だが、家に帰った時、彼らが女を喜ばせるために仕掛けた火災が、私と腹の子を奪うことになるとは思いもしなかった。

死の直前に抱いた強い未練のせいだろうか、私は幽霊として、ほぼ焼け落ちた別荘から漂い出て、矢野康也のもとへ向かった。その時、彼ら三人は和やかな雰囲気に包まれていた。

私にいつも反抗的だった息子は、出会ってからわずか三か月足らずの山口真里衣を慕わしそうに見つめ、顔を赤らめながら今回の「実習救援」を称賛していた。

そして私の夫は、穏やかな表情で彼女の頭を優しく撫でていた。

「おバカちゃん、今回は本当にバカじゃなかったな。これでニックネームも『お利口』に変えるべきだな」

矢野康也の褒め言葉に、山口真里衣は恥じらいながら甘い声で答えた。

「それは隊長の指揮が良かったからです。わざわざ放火して実地訓練をさせてくださって、次回はもっと上手くやります」

もっと上手くやるだと?

私はまだ燃え続ける別荘を見つめ、嘲笑の笑みを浮かべた。

この時、私の遺体は、まだ残火に焼かれているのだろう。

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