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第3話

龍治の家を出ると、すぐに学校に向かった。

今日は紗奈の試験をサポートする日だった。

桃沢紗奈、僕の彼女だ。

スマホを取り出してメッセージを送った。

「どこにいるの?今教室の前だけど、見えないんだけど」

スマホの画面は送信中の表示を何度も繰り返しているが、一向に返事が来ない。

またメッセージを送った。「また僕をからかってるんじゃないだろうな?」

それでも返事はなく、何度か電話をかけても応答がない。

窓から差し込む陽射しが首を焼くように感じる。

考えたあげく、落ち着こうと決め、僕らが借りているアパートに向かった。

室内は綺麗で、人の痕跡は一切ない。

「お嬢ちゃん?

今日の試験はどうしたの?」

部屋は標準的な二室一リビング一バスで、どこを探しても人がいない。

なんだか落ち着かない気持ちになった。

再び番号をダイヤルしたが、何回目なのか自分でも思い出せない。

「スイカ・カボチャ・オオカボチャ、耀司はバカさん」

彼女のスマホの着信音が鳴った。

その音は先月、賭けに負けた僕に嫌がらせとして設定したものだ。

音声は彼女のものだ。

僕は不審に思いながらも音源を探す。

ついに冷蔵庫の前に立った。

その音は冷蔵庫の下から聞こえていた。

冷蔵庫の下に黒いものが一部見えていた。

「落ちてたのか」

手を伸ばして冷蔵庫の下を探った。

突然、ふにゃりとした感触が指先に触れ、何か糸が擦れるような感覚があった。

ゴミかなと思った。

思いっきり引っ張り出した。

視界に入ってきたのは、一束の髪の毛で、僕がさっき触れたらしく、柔らかい部分は頭皮のようだった。

僕は転んで、心臓が激しく鼓動を打った。

「スイカ・カボチャ・オオカボチャ、耀司はバカさん」

スマホの着信音が何度も鳴り響いている。

甘い女の声が耳元に響く。

その声は明らかに冷蔵庫の中から聞こえていた。

何かが僕を突き動かし、冷蔵庫を開けた。

空っぽのはずの冷蔵庫は、今や肉の断片でいっぱいになっていた。

その中に彼女へ贈ったブレスレットが見えた。

それはバレンタインデーに彼女にプレゼントしたものだった。

数日前、戻れないからと言ってそれを買って彼女に渡し、慰めたものだ。

その晩、ビデオ通話で彼女は楽しそうにそれを付けていた。

「あら、ありがと。大好きだよ」

僕は気絶しそうなぐらい驚いた。

震える手でスマホを取り出し、警察に通報した。

昨日の夜は夢ではなかった。

龍治は僕の彼女を殺した。

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