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第24話

(医師の視点)

一年後。

一年前に一人の犯罪者が送られてきた。

彼は深刻な幻覚と記憶喪失の症状を抱えている。

時には私の助手を咲希と思い込み、また別の時は私を警官と思い込むこともある。

常に体中に傷をつけている。

記憶も定まらない。

私たちは彼に薬を塗ると、彼はそれを塩を撒かれると勘違いし、注射をすると薬物を強制させられると思い込む。

しかも、特に人に暴力を振るうことが好きだ。

私の助手もそのため辞職した。

これが三人目だ。

しかし、

新しい助手を採用した。

彼の名前は智博だ。

非常にハンサムな男の子で、大学を卒業したばかりだ。

この患者はなぜかこの男性助手がとても気に入っているようだ。

彼を見てただ笑っているだけで、泣いたり騒いだりせず、薬を塗るときも素直になっている。

ただときどき、智博に抱きしめてほしいという要求をする。

助手も喜んで応じていた。

おかげで僕の負担も少し軽くなった。

今日は予想外の光景を見た。

患者が助手の襟を掴んで、低い声で何か囁いている。

助手の耳は目に見えて赤くなっていた。

僕は遠くにいたので聞こえなかったが、彼の口の動きは見えた。

彼は、「お前のこと覚えている。ずっと覚えていたんだ」と言っていた。
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