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第2話

目覚めたとき。

僕は龍治の家のソファに横になっていた。

「目が覚めたか。梨のスープを飲もう、今作ったばかりだぞ」

龍治はエプロンをつけて、梨のスープを僕の前に置いた。

昨日の記憶がフラッシュバックするように甦ってきた。

僕は後ずさりをして、彼との距離を取った。

彼は近づき、肩に腕を回してきた。

「お前、悪夢を見て毎回そんなに怯えるんだな」

「毎回?」

「ああ、お前が悪夢を見て目覚めるたびに、僕を見る目が怖がってる。その目は僕を本当に傷つけるよ。

まあ安心しろ、次からはお酒を強制的に飲ませたりしないからな」

目の前の優しい龍治と、昨日の夜、骨切り包丁を手に握って僕を殺そうとした男は別人みたいだった。

あの恐ろしい笑みがまだ目の前にあるかのようだ。

僕は震える声で尋ねた。「つまり、昨日の夜はずっとここでたんまり酒を飲んでいたのか?」

「そうだよ、お前が研修から帰ってきて、歓迎パーティーをしようと思ったんだ。それで昨日は一夜中酒を飲んだんだ」

自分の服を嗅いでみると、確かに酒の匂いがした。

だけどなんで覚えていないんだろう。

スマホを取り出して彼女にメッセージを送った。

二秒後に、女の子がケーキを食べるスタンプが返ってきた。

昨日のこと?

なんだ、夢だったのか。

一安心した。

龍治に対する恐怖が少しだけ薄らいだ。

「ごめんな」

彼は梨のスープを掲げた。「謝るならこれを飲むんだな」

誤解していた彼がこんなにも気を使ってくれる。

梨のスープを飲むと、不思議と温かい気持ちになった。

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